大慈寺

鹿児島県志布志市にある大慈寺は、南九州を代表する臨済宗の名刹です。創建以来、幾多の時代を経て、多くの歴史的偉人たちと関わりながら現在に至ります。この記事では、明治維新を支えた大慈寺の名僧「柏州和尚」を中心に大慈寺の歴史や文化財、そして訪れた著名人たちの足跡を辿り、その魅力を深掘りします。

鹿児島・志布志の歴史を刻む名刹「大慈寺」|歴史と偉人たちの足跡

大慈寺の創建と歴史

大慈寺は、興国元年(1340年)に志布志城主・楡井頼仲によって創建された臨済宗の禅寺です。文安元年(1444年)には、幕府によって臨済宗の「十刹」に指定され、南九州の仏教文化の中心的存在となりました。

江戸時代には16の支院を持ち、100名以上の僧侶が学問に励んでいたと伝えられています。しかし、明治2年の廃仏毀釈の影響で一時廃寺となりますが、明治維新の志士たちと深い関わりを持つ柏州和尚の尽力により、明治12年(1879年)に再興されました。

現在の大慈寺は、鹿児島県内で唯一の近世寺院建築が残る貴重な文化遺産となっています。

大慈寺の見どころ

大慈寺には、歴史を感じられる多くの文化財が残っています。

① 大慈寺書院

慶応元年(1865年)に建築された書院が現存しており、鹿児島県内で唯一の近世寺院建築として県指定文化財に指定されています。伝統的な木造建築の美しさと、静謐な空間が魅力です。

② 歴代住職の位牌堂

柏州和尚をはじめ、歴代住職の位牌が祀られており、維新の志士たちが深く関わったことを偲ぶことができます。

③ 美しい庭園

禅宗の寺院らしく、美しく整備された枯山水の庭園があります。静寂の中で心を落ち着かせるには最適な場所です。

大慈寺へのアクセス


住所:鹿児島県志布志市志布志町2丁目1-19
アクセス

  • JR日南線 志布志駅 から徒歩約15分
  • 鹿児島市内から車で約2時間
  • 志布志港から車で約10分

拝観時間:9:00~17:00
拝観料:無料(志納歓迎)

柏州和尚 ー 明治維新を支えた大慈寺の名僧

柏州和尚(はくしゅう おしょう) は、明治維新期に活躍した臨済宗の僧侶であり、志布志市の大慈寺を再興した重要な人物です。彼は仏教界のみならず、政治・文化面でも多大な影響を与え、日本の歴史に名を刻んでいます。

1. 生涯と背景

柏州和尚は、志布志市の大慈寺の第64世住職を務めました。特に幕末の動乱期において、薩摩藩の尊王思想の普及に尽力し、政治的にも重要な役割を果たしました。

文久2年(1862年)、孝明天皇と拝謁し、薩摩藩の尊王思想を伝達したことが、後の討幕運動や明治維新への転換点となったと言われています。彼の思想は、単なる仏教界の枠を超え、日本の政治変革にまで影響を及ぼしました。

2. 大慈寺に訪れた歴史上の偉人たち

大慈寺には、多くの歴史的偉人が訪れています。その中でも特に有名な人物を紹介します。

① 西郷隆盛

幕末から明治維新の立役者である西郷隆盛は、大慈寺を訪れ、柏州和尚と深く交流しました。志布志の地は、薩摩藩の要所でもあり、西郷隆盛が寺で密談を行ったとも伝えられています。

② 大久保利通

もう一人の維新の英雄、大久保利通も大慈寺を訪れたことが知られています。西郷と同じく、明治維新後の政策について話し合いを行ったと言われています。

③ 近代の総理大臣たち

明治以降、大慈寺には歴代の内閣総理大臣をはじめとする要人たちも訪れています。特に薩摩出身の黒田清隆(第2代内閣総理大臣)や松方正義(第4・6代内閣総理大臣)は、寺の復興や維持に関心を持ち、訪問した記録が残っています。

④ その他の著名人

東郷平八郎(連合艦隊司令長官)
川上操六(大日本帝国陸軍の軍人)
森有礼(初代文部大臣)
山本権兵衛(第16・22代内閣総理大臣)
小松帯刀(薩摩藩家老)

こうした幕末から明治期の偉人たちが訪れたことにより、大慈寺は歴史的にも重要な役割を果たしたことが伺えます。
彼らと共に尊王倒幕の思想を育み、幕末から明治へと続く政治的転換期において、精神的支柱の役割を果たしました。薩摩藩が進めた討幕運動の思想的基盤を築いたと言っても過言ではありません。

3. 廃仏毀釈運動と大慈寺の再興

大慈寺は、興国元年(1340年)に創建された臨済宗の禅寺であり、南九州における仏教の中心地の一つでした。しかし、明治2年(1869年)の廃仏毀釈運動により、多くの寺院と同じく破壊の危機に瀕します。

柏州和尚はその再興に尽力し、明治12年(1879年)に旧大慈寺宝池庵跡に寺号を復し、再建を果たしました。彼の努力により、大慈寺は再び地域の精神的な拠点となり、現在もその歴史と文化を伝え続けています。

4. 建築と遺産

柏州和尚の隠居所として建てられた大慈寺書院は、現在も残る貴重な歴史的建造物です。この書院は、鹿児島県大隅半島に現存する唯一の近世寺院建築であり、幕末から明治にかけて多くの寺院が焼き払われた中で奇跡的に残った建物です。

この書院は、当時の薩摩藩の寺院政策や、維新期の変革に耐え抜いた歴史を物語る重要な遺産となっています。
柏州和尚は、単なる僧侶ではなく、幕末から明治維新にかけて日本の政治と思想を支えた重要人物でした。彼の活動は、尊王倒幕の精神的支柱となり、大慈寺の復興を果たすなど、多方面に及びました。

今日、大慈寺は志布志の歴史を物語る文化財として多くの人々に親しまれています。柏州和尚の影響は今もなお大慈寺の境内に息づいており、その精神は訪れる人々に深い感銘を与え続けています。

この記事を書いた人

シモダグンジシモダグンジ

旅する雑貨屋/只今島根県津和野町に移住して蜂蜜と森作り
1979年3月生 温泉と焚き火と森林が好きな泳げないうお座ひつじ年。
田舎暮らし、ときどき旅。ときどきイベント出店。
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