竹やぶから竹林へ 竹材の有効利用
最近、竹林が里山の森林地帯に急激に広がり、森の木々を枯らし、森林が竹林へと変わる現象が各地で問題視されています。この問題の主な原因はほとんどがモウソウチクによるものです。モウソウチクは地下茎を通じて広がり、新たな竹を生やしていきます。この地下茎の成長には、既に高く伸びた竹から送られてくる光合成によって作られる糖分などが必要です。地下茎からは新しい竹の芽が出て、竹が伸び、やがて枝が出て葉が広がりますが、この過程では既存の竹からの“援助”によって成長します。かつて良寛和尚が竹の子が床下で成長するのを妨げないように床に穴を開けた故事が示すように、竹は暗闇の中でも成長し領域を広げる能力があります。この竹の成長様式から、竹林が実質的に一つの生命体として機能していることが分かります。
主な竹害例
– 有害獣の住みか: 竹林は有害獣の隠れ家となり、これらが人の生活圏に侵入し、生活を脅かす原因となっています。
– 土砂崩れの要因: 根が浅く強固でない竹は、土砂崩れのリスクを高めます。また、人工林へ侵食することで杉や檜などの成長を妨げる問題もあります。
– 通行の妨げ: 悪天候時に竹が倒れると、生活道路や国道、線路の通行障害を引き起こし、電線に倒れると感電の危険性もあります。
竹やぶから竹林への整備方法
竹林の効率的な整備には、定期的な伐採と選択的な残存が重要です。適切な間隔で竹を伐採し、健康な竹林の維持を図る必要があります。また、竹の新芽を適時に取り除くことで、竹林の過密化を防ぐことが可能です。一気に伐採するなら簡単ですが、後々の作業の事も考えると少ない本数を伐っては処理し、無理のない作業を心掛けることが重要です。最終的には竹やぶ状態から傘をさして歩ける竹林状態にするのが目標となります。効果的な方法は地下茎を複数箇所で切断します。近隣に民家などがあり、地下茎の侵入を防ぎたい場合は、波状のトタンを地下40cm以上の深さに埋設することで対策が可能です。手間と時間は必要となりますが、竹を定期的に刈り取ることで、根茎が栄養を蓄えることが難しくなり、その結果、竹の生育を抑制することができます。
近隣に民家等あり地下茎の侵食しては困る場合は波状のトタンを地下40cm以上の深さで埋めれば防ぐ事ができる。
手間と年数はかかってしまうが、竹を定期的に刈る事によって根茎が栄養を集められなくなり、減らす事ができる。
竹材の有効利用
– 漁礁の設置: 海藻が減少し磯焼けが進む地域で、竹材を使った漁礁を設置することで、ウニの天敵となる魚の生息環境を整えることができます。(食物連鎖を利用したトップダウンコントロール)
– 獣害対策用の柵: 竹で作られた柵は獣害を防ぐための効果的な手段であり、コストも抑えることができます。
– 有機農法への利用: 竹を粉砕して肥料や除草剤として使用することで、環境に優しい農法に貢献します。
– 炭化竹の利用: 竹を炭化し、床下の除湿や調湿に利用することで、シロアリ対策や建材の腐り防止に役立ちます。
– 遊歩道の整備: 竹階段や手すりを作り、自然との触れ合いやレクリエーションの場を提供します。
まとめ
竹林の適切な管理と竹材の有効利用は、環境問題への対応だけでなく、地域社会の持続可能な発展にも貢献します。竹林を適切に管理することで、竹害を防ぎつつ、その多用途性を活かした新たな価値を生み出すことができます。これからも竹と共生する方法を探求し、環境と人間が共存する未来を目指していくことが重要です。
竹の生態と人間との関わり
竹の特徴と分類
竹はイネ科に分類されるが、通常のイネ科草本とは異なる特徴を持ちます。竹類は分枝が豊富で、細胞壁が木質化して硬くなることが特徴です。一方で、アシやダンチクなど、茎が木化する草本も存在します。竹類の硬さは、リグニンとケイ酸(二酸化ケイ素)の細胞壁への蓄積によって得られます。竹は大きく、タケ、ササ、バンブーの3つに分けられ、それぞれ成長の特徴が異なりますが、形態だけでなく生態においても分類学的な差異が見られます。
竹の成長
竹の成長は非常に迅速で、マダケやモウソウチクの場合、高さが15-20mにも達することがあります。竹の節は地下茎からの発芽段階で形成され、節間の成長は細胞分裂により進みます。竹の節は成長点の下部から順に剥がれ、竹の稈鞘は成長が終了すると自然に脱落します。また、竹林の急速な拡大は、特にモウソウチクが原因である場合が多く、これは地下茎を通じて領域を拡大しながら稈を増やしていく性質が関係しています。
竹はその迅速な成長と強靭な生命力により、人間との関わりの中で様々な役割を果たしてきました。移植や駆除の方法を適切に管理することで、竹林の健全な維持と生態系の保護に寄与することができます。
大型のタケ類、例えばモウソウチク、マダケ、ハチクなどの移植を行う際には、通常、光合成を行う能力を持つ成熟した稈を1~2本持つ地下茎を1~1.5メートル程度掘り取り、植え付ける方法が一般的です。しかし、地下茎から生じる不定根は弱く、地下茎が短い場合には、移植直後に稈の葉から蒸発する水分を補うだけの水を吸収することができず、結果として多くの場合、衰弱して枯れてしまいます。稈を持たない地下茎だけを移植すると、新しい竹の芽を育て、伸ばすためのエネルギーが不足しているため、これもまた枯れることがあります。そのため、稈の上部を切り取り、一部の葉を残して移植する方法がよく採用されますが、地下茎が十分に発達し、太い稈が形成されるまでには数年を要します。以下のような移植方法を用いることで、生着率を大幅に向上させ、新しい稈の成長を促進することが可能です。
竹の移植と駆除
移植
大型の竹類の移植では、成熟した稈を持つ地下茎を掘り上げて植えつけるのが一般的です。しかし、地下茎から十分な水分を吸収できない場合、竹は枯れてしまうことがあります。上部を切除せずに葉を残した状態で移植すると、活着率が高まり、新たな稈の成長を早めることができます。
移植する稈には、上部を切り取らずに、十分な葉を保持させ、地面から少し上の範囲で、各節間の上部に小さな穴を開け、注射器を用いて髄腔内に水を充分に注入します。この水は髄腔膜によって吸収され、導管を通じて稈の上部へ運ばれ、葉のしおれを防ぎ、光合成が正常に行われるのを支援します。光合成が正常に進むと、地下茎には光合成産物が供給され、不定根と地下茎の発達が促進されます。翌春、場合によってはその年の夏から秋にかけて、細い竹の芽が現れ、小指から親指ほどの太さの稈が1~2メートルほどまで伸びます。移植後は、年ごとに地下茎から生じる竹が太く、高くなり、数年後には立派な稈が形成されます。節間の上部に穴を開けて水を注入するこの方法は、七夕飾り用に切られた竹の葉を長期間生き生きと保つためにも有効であると、上田弘一郎博士が述べています。
駆除
モウソウチクが森林に侵入して問題となる場合、筍が成長し始める春に全て伐採し、その後も新たに発生する稈を伐採することで、地下茎のエネルギーを枯渇させ、竹を枯死させることができます。
主に関東地方以西の里山では、モウソウチクが森林に侵入し、森林の衰退を引き起こしている現象が確認されています。この問題に対処するために、以下のような駆除方法が効果的だと考えられています。
春に発芽し始めたモウソウチクの新芽は、約2ヶ月で高さ15~20メートルに成長し、枝葉を広げて光合成を活発に行うようになります。しかし、その成長段階までは、地下茎を介して既存の竹から供給される光合成産物を消費しています。このため、新芽が成長を完了し、光合成を活発に行い、光合成産物を蓄積しようとする直前の時期、つまり6月頃が地下茎に残されたエネルギーが最も少ない時期です。この時期に新芽を全て伐採すると、地下茎は秋までにごく細い新芽を出して回復しようとしますが、これを再度伐採すると地下茎に蓄えられたエネルギーが枯渇し、最終的に枯死します。春になって再び細い竹が生じる場合がありますが、これを全て伐採することで竹は完全に枯れてしまいます。