※一部フィクションです…念のため。
ナオキンのメキシコ珍遊記
みんな元気!
今メキシコのオアハカにいます。
みんな元気でやってる、こっちは楽しんでるよ。
明日から学校に1ヶ月通うんでドキドキしてます。
ほんじゃっちょっとオイラ明日からガンバルゼ!
しばらくはノンウーマンで学生気分味わうぜ。
学校という名の場所を3度ドロップアウトしてる俺としては
かなり緊張してます。今回はジャスト1ヶ月ふんばります。
そんでその後メキシコ料理のスクールに通う予定です。
いやーホントいろいろありました。
今日は2週間一緒に旅したフランス人の友達ココと別れました。
ココはチアパスに向かい俺はオアハカで。
すげー性格の悪い女で、すげー素直で、いっぱいケンカもしたけど、
こいつがいなかったらこんな素敵な旅出来なかったなーっと今になって分かりました。
バスターミナルでの別れ際、少し潤みました。
ココにはマンイズノークライっと強がりましたが、
ココも泣きそうで英語をちゃんとしゃべれない俺は苦しくって
二人でいつも聴いていたボブのノンウーマンノンクライを口ずさんで場をやり過ごすのが精一杯でした。
ホント彼女からは色んなことを学びました。
やっぱり一番学んだのは目を開いて毎日を生きろっということです。
ケンカ上等、脱糞上等のココは様々なトラブルと俺を恐怖に遭遇させましたが
今となれば良い思い出です。
一緒にキャンプ張りサボテンを食べ警察に追われ、サボテン砂漠を走り、
こけてサボテンが体中刺さり、観念して一緒に手を後ろにして天を仰いだのも良い思い出です。
生まれて初めて外人にファックユーと心から本気で言わせるほど性格の悪い女性でしたが。
今になれば、あー俺のこと心配してくれてたんだなーっと分かります。
時々日本語で俺は、テイクケアテイクケアうるせーんだよ!
怒ってばっかいんじゃねーよ、お前アタマオカシイんじゃねーかとか言ってました。
まーココは分かり易い英語で散々俺の文句を言ってましたが、
理解できるだけにそれがまたムカつきました、言い返したいのに英語力が追いつかない!
そんな俺に、何か文句あるのっと挑発してくる!
ホントマジで殴ろうかと思いました。あー言い返せない男は暴力に走る、なんだか分かる気がします。
まーココなら殴っても大丈夫、俺がナイフで返り討ちにあうだけだろうから。むかつく奴なんですホント。
15年旅していて南アメリカは知り尽くしていて、私は何でも一人出来る!みたいな感じが鼻について、
その癖ちょっと淋しがり屋で、じゃーここで別れようっと言うと急に黙って少し考えて、一緒に行くっと云う。
こいつホントふざけてるなーとか思ったけど今思えば、
あーやっぱりココもどんなに強くても女の子なんだなーっと思います。
着替える時はやたら恥ずかしがるし、あーそれがまたウザかった。
沢山の出会いと別れ、嫌な奴でもいざ別れるとちょっと淋しい。
ムカつく思い出も楽しい思い出も離れてしまえばもう繰り返せない日々。
あーそんな日々を胸に秘めつつ明日も生きよう。
いっぱい書きたいことあるけど不思議なもんで
書きたいことは何故か書かないほうが良さそうなこと
ベールに包んで伝えたいけど
そういうのは得意じゃない。
次みんなに会うときは夢の語り部、いっぱい話し聞いて欲しい。鍋でもしながらね。
あっやっと日本語にありつけた、ちょっと嬉しい!
ジャパニーズ イズ ビック ジョイント!
ジャパニーズ イズ メニー ぺヨーテ!
そうそう 俺はいつでもお腹いっぱいになりたいんだ。
やっぱり男の子はご飯をいっぱい食べなきゃね。
その男コール
なんとなく切り替わったなって感じる。
ポルケー、にわか学生気分!
最近はドミでテキサスリーゼント野郎っと二人きり。
名前はコール。すげー良い奴で見習うところが沢山ある。
初めて会ったときコールは裸で顔中体中傷だらけ、
メスカルと云う芋虫みたいのが入った酒をショットでそうとう呑んできたらしい。
ケンカしたの?と聞くと、いや飲みすぎて気付いたら裸でコケまくった、
パスポートがない!っと云っていた。
コールの全く気にしていない笑顔が俺を引き付けた。
その時はまだ一緒だったココも初めてアメリカ人でいい奴に会った!っと云っていた。
後日コールは笑って、彼女は頭がおかしいっと云っていた。
俺も同感、あいつはマジでおかしいんだっと精一杯伝えた。
2週間も一緒だったんだぜっと言うと、じゃーお前もクレイジーだな、なんて云っていた。
身長190近く体重100オーバー、体もデカければ人間もデカイ不思議な奴だ。
どうやらミュージシャンらしい、コジキから買ってきたバイオリンを上手にいきなり弾きだす。
よくよく聞くとギターからベースと何でも出来るらしい。
独学でスペイン語を2年勉強した云う、コールの辞書はかなり使い込まれている。
どうやって単語覚えたのっと聞くと
絵を書き出した!真剣に絵を描いてそこに単語!これだと一回で覚えられるっと教えてくれた。
奴の個人ノートには落書きのように見える絵が沢山描いてあった。
俺には学校はいらないんだ、街が俺の学び場さっと軽く笑う。
想像力!そうなんだ忘れていた。そして楽しむこと。
日本から俺はCDを30枚位持ってきていた。
スピーカーもちゃんと持ってきた俺はコールに、何か聴きたいのあったら自由に聴いてというと、
シティーオブゴットとフィッシュマンズを選んだ、知らないくせに素晴らしい選曲だ。
どんな音楽が好きなのっと聞くと、今は街の音だな。っと音楽は全て好きだぜ。
っと云いながらオアハカ名物コオロギの唐揚げみたいのをムシャムシャ食い続ける。
水を買いに行くと10リットルで買ってくる、
そして次の日には半分なくなっていて俺に1リットルおすそ分けしてくれる。
二人でモクモクしながら俺は宿題をする。
そしてコールは家庭教師さながらに教えてくれる。
バルコニーから夜空を見上げれば、いいかー直樹、あれがルナだぜっと云った感じで。
外出するときは必ず何かいるものあるかっと聞いてくれる。デカイ男だ。
俺は小さい男、
コールのネックレスを修理する。
街の音、それが音楽。
街の人、それが学校。
コール、普通に言えるお前がデカイよ。
無理はしないけど
意識しちゃうぜ!
オッパイがイッパイの旅
ロスモチスから山岳鉄道に乗りクリールという小さな町を目指した。
列車は遅れがちで街に着いたのは日も暮れた7時頃だった。
駅にはゲストハウスの客引きが待ち構えていて、
幾人かの客引きと話した後、マリオという客引きと交渉が成立した。
俺がマリオのシボレーバンの中で待っていると
もう一人白人の旅行者を連れてきた。
もう駅には観光客もいなく俺達は3ブロックほど離れたゲストハウスに着いた。
家族経営のロッジ風ゲストハウスでキッチンも自由に使って良いという。
なんだか居心地がよさそうだ。
オーナーのオバちゃんにカップルかと勘違いされた俺達は、
なんだかんだと説得され、まー安くなるから良いかっとシェアすることになった。
部屋に入りお互い初めての自己紹介
、あっ俺ナオキです。っと言った具合に多少硬い。
彼女の名前はアニエス、フランス人だ、青い瞳と金髪と俺より2回りデカイ足。
簡単な英語で話してくれる優しい女性だ。
キッチンに行きコーヒーを飲みながら寛いでるとアニエスが、
明後日ツアーに行きたいんだけど2名からなの良かったら一緒にいかない。
っと言う、何故か何も考えず値段も聞かず即答、あーいいね!行こうよ。っと。
マリオがやってきて何処を回るか何日行くか
バックパックごと持って行った方が良いかなど打ち合わせをする。
温泉と村と山、バスは走ってないそうだ。
なんだか楽しみになって来た。
部屋に帰りアニエスと旅の話や音楽の話、鍵はどうするかなどを話す。
彼女はあまりおしゃべりなタイプではない、
どちらかというと静かにベッドで日記を書いているタイプだ。
けど不慣れな俺に気を使ってくれる心優しい女性だ。
どちらからともなく静かに眠った。
その日何故かエロい夢を見た。
うむー正夢になったらどうしよう、などと朝から思ったりした。
チャリを借りてちょいと辺りを散策しようと思っていると チャリが壊れていた。
マリオがチェーンとパンクを直すから1時間待ってくれという、
なんだか気が合うマリオとマリオの自宅までバンで道具を取りに行った。
ゲストハウスに戻り修理が始まる、
最初見ていたが何だか俺も一緒に仕事したい、
俺もバックパックから簡易工具セットを取り出し、一緒に修理しだした。
一緒に働いてみれば、許せる男か直ぐ分かる。
なかなか分かってる男だ、あうん呼吸が成り立つ。
マリオはチェーンを直しだし、俺はブレーキを治し始める、
お互いの様子を伺いながらお互いの道具を、これだろ今欲しい道具は、
っと云った感じで渡しあう。
少しづつアミーゴになって来た。
俺はコンデサーをバンから下ろし準備する、
良く見ると日本製、良く見ると現場で使ったことがある。
俺の手際にマリオも楽しそうだ。
お互い手を油で真っ黒にしながら笑いあった。修理完了。
そんじゃーちょっといってくるよっと俺は
洞窟に住むタラウマラ人の村に向かった。
自然が作った風が作った雨が作った田園と
不思議な形をした大なり小なりの岩岩。
ここで初めて旅行に来て感動した。
10mくらいの岩の上にタラウマラの少女が二人談笑しながら編み物をしている。
馬が何処からともなくやってくる。
馬具も付けずに小学生くらいの男の子が疾走していく。
言い表せない景色に埋没する。
タコスを食べ宿に帰ってしばし仮眠、不図目を覚ますと、アニエスが着替えてる。
見たら心拍数があがり寝れなくなると思い、再び目を閉じる、
それにしてもTバックだったなーっと、もう寝れない。
しかも紐だったよなーとか思ったら、もうやばい。
男だったら誰もが経験する微妙に苦手な時間。
嬉し恥ずかし、妄想タイム。またエロい夢を見だした。
夜、一緒にビートルズを聴きながら歌う。
お互い日記を付けながらのハミング、旅の狭間のひと時。
翌日、9時ツアー出発。もちろんメキシカンタイム気づけば10時だ。
どうやらマリオはマドリードの女の子を2人捕まえてきたようだ、
軽く自己紹介を交わしバックパックをシボレーに積み込みイザ出発、
ナオキは若い子好きかとっとマリオに聞かれる。
もちろん大好きだぜ!っと答える、途中でマリオの家による、
荷物でも積み込むかと思ったら、超可愛い女の子が俺の隣に乗ってきた。
マリオの甥っ子でチワワからクリールに遊びに来ているそうだ。
マリオが云う、ナオキ可愛いだろ!もう笑うしかない。
あーやばいっ可愛い、ラテン系ムチムチガールだ。
気づくと俺は旅の指差し会話帳を取り出していた。
そして無敵の小道具を手にした俺は、
さっきまでずっと黙ってたのに急に元気になりだす。名前はガブリエル。
なんだか分からないうちに凄い仲良くなり始めた。
やばいっ!一緒に踊ってる。
ムシカっ!ムシカっ!と二人で連呼、顔に化粧しあって遊んでる。
Fカップの開けた胸元にクラクラしてくる、やばい。
キャバクラより楽しい。指差し会話帳でどんな性格か聞くと
おませなセクシーガールだと示してセクシーポーズをとってくる。
もう気分はべサメムーチョ、やばい我慢の限界を知り始めた。
山々の峡谷を眺めながら悪路に揺られ、
3人シートなのにムチムチガールは俺に引っ付いている、
おっぱいが肘に頭が肩に手が腿に、唇を指で引っ張られる。
バンが揺れる度にムチムチ感に満たされる。
うむー俺も触りたい!しかし、後3人綺麗な女性がバンに乗ってる。
あんまり調子に乗れないっ。
そう、キャバクラで楽しんでいる姿を
知り合いの女の子に見られたくないって感じだ。
日差しは強くスピーカーからはガブリエルの持ってきた
陽気なメキシカンポップスが流れる、うとうとしながら手を軽く繋ぐ。
またエロい夢を見る。
寝るたびにエロい夢を見る。寝る旅。悪くない。
バトピラスという村に半日掛けてたどり着く、
隣の村までどのくらいあるのだろうか、
人里離れた村だ山と山の間に川が流れ両岸に村がある。
16世紀からの村で土作りの朽ちた教会が村のサイズには似つかわしく大きい。
遥か昔に移民してきた白人の子孫の村だ。
混血は殆どされていずメキシコであってないような
、目が合えば誰もがオラッっと声を掛けてくれる。
ゲストハウスの中庭にはゴムの木が広く木陰を作り、
アリが葉っぱを切っては巣に持ち帰って行く。
故障中のトラックがミッションを直している、
野次を入れながらドライバーと仲良くなる。
夜みんなでゴハンを食べる、メキシコのビール、テカテとライム。
程よく酔っ払った俺達はマリオにメキシカ音楽のバーに連れってもらう。
4人のメキシカンが哀愁ただよう歌から陽気な歌まで奏でる。
50歳くらいのおじさんとおばさんが手を合わせ踊る。
テカテを飲みながらナチョスをツマミにしてツアー仲間と心を通わせる。
マドリードから来た二人は陽気な女性で直ぐ打ち解けた、
俺が最初に覚えたスペイン語のフレーズはバモスアバイラ-ル、
一緒に踊りましょう!だった。
酔いに任せてご機嫌に踊りまくる、バーのみんなとなかよくなる、楽しい!
みんなも乗ってきた、トラックの運ちゃんも何だか踊ってる、
コジキも一緒に踊ってる、目の会った女性にはバモスアバイラール!
手を取り笑顔で踊ってみよう!
楽しい一日だった。翌日マリオが褒めてくれた。
ナオキー俺は嬉しいよ。朝、村のみんなが云うんだ。
あのハポン野郎はイカシテタゼ、
俺は昨日あいつと踊ったぜって、いいやつだよって。
ナオキー、俺は云ったよ。あいつは俺が連れて来たアミーゴなんだぜ!って
、ナオキー有名人だなッハハッツハハー!
俺はうれしいよ。って。そうマリオに云われると俺も嬉しくなった。
やっぱりアミーゴの甥っ子には手を出せない、
何だか気持ち的にもうオッパイつんつん出来ない。
あーもっとツンツンしとけば良かった。もっとチュっチュしとけば良かった!
後悔とアミーゴの出来た嬉しさの狭間、
一緒の部屋のアニエスのTバックと裸が頭にちらつく、っと同時に
ナオキ疲れてないっと気を使って肩を揉んでくれる
マドリード娘の頭に当てるオッパイが神経を緩ませる。
頭の中はオッパイがイッパイ。
俺は歌う、
オッパイがイッパイ、嬉しいな食べーたいなー。。。。。
幼稚園の頃ポンキッキで流れていた音楽。
オッパイがイッパイならまた旅も楽しい!
しかしオッパイがイッパイだと困ってしまう。
何の話を書こうか忘れた。
きっとオッパイがイッパイでそうとう嬉しかったんだと思う。
えーオッパイの話でした。
チャンチャン
マスンテの休日
学校に5日間通う、脳内疲労のピーク。
ちょうどそんな時ドミに救いの主が現れる。
日本人の女の子二人、ゆきさんとのりこさん。
二人はメキシコシティーで出会ったそうだ、
ゆきさんは南米を1年周り、のりこさんはバイクでアフリカを回るという!
話を聞けば二人とも大先輩、あー心強い。
「マスンテのビーチ行くんだけど、どう?」
あっそれだー俺は直ぐに食いついた。
「あっいいっすねー!」是非是非である。
そしてコールと大学生のカズユキ君を誘って金曜日、
学校が終わってから出発!ゆきさんとのりこさんは朝のバスで向かっていた。
バスの中コールが言い出す。
「彼女達はどこのゲストハウス泊まるんだ?」
「知らないよそんなの。」
「メールアドレスは知ってるのか?」
「知らないよそんなの。」
「どうやって会えるんだ?」
「大丈夫だよっそんなの問題ねーよ。」
「オーマイガッ!」
俺が大丈夫って言ったら大丈夫なのに理解が出来ないらしい。
不安な顔で2等バスの狭い座席でいじけてる。
まーいじけてる位がおとなしくて丁度良い。
そんな感じでマスンテのビーチに向かった。
夜の到着。ビーチ沿いの安宿に決める。
コールはまだ云う。
「彼女達は何処にいるんだ?」
「だからー知らないって」
しかし宿のドミに出向くとセクシーな女子がいっぱい。
やつの不安な顔も一掃された。
あいさつ回りに忙しいそう。
3人で夜の海に行き、一服しながら寝転がる。
流れ星を3つほど見る、素っ裸で泳ぐ。
コールは俺が教えた蓮華座を組む。
俺は苦笑する。奴は生粋のヤンキーそしてリーゼント。
その手の外人とはあきらかに違うのだ。
似合うのはまさにハンバーガーとビールという容姿。
素敵な夜だ。
ケンタウルス座を見るとタックンを思い出す。
寝なければ!
翌日おっぱいビーチを満喫する1ヶ月は居たいくらいだ。
ゴミの無い優しい砂浜とブルーの海、定番の定番だが、定番に出会えて感動!
一度は来たかったんだ、こういうところ!
昼頃ゆきさんとのりこさんに会う。
やっぱり普通に会えた。
駄目だなコールは、そういうもんなんだって。
夜みんなでゴハンを食べて浜辺に行く。
なぜか運動を始める、器械体操したりヨガしたりお茶の作法をしたり、
なんだか楽しい。
のりこさんはロシアをバイク旅行するほどの人なのに
何故か水が怖いという。一緒に少し膝くらいまで入る。
やはりチョット驚いている。大丈夫だって!っと云いつつ
高潮に俺は脚をとられる。
写真を撮ろうとしたゆきさんはしゃがんだばかりにお尻だけ濡れた。
なんだか凄い楽しい。
真っ暗の月明かりの海を泳ぐ黒い水平線に吸い込まれそうな
ドキドキ感がたまらない。
戻ってこれなかったらそれはそれなんだなって感じでクロール、
指輪が海に零れる。
永遠のバイバイ。お気に入りのタイガーアイの14金。
永遠のバイバイ。この一瞬の時間。
宿に戻ると焚き火を囲んでジャンベしてる、みんなも楽しそうだ。
ハンモックに揺られ一服。壁裏でエロいことし始めた即席カップルがいる。
しばらくそのサウンドに耳を傾ける。
潮の音、焚き火の音、ジャンベ、運動の息遣い。
ふとしてみればみんな自然の音だ。
俺も自然に移動する、
カナダからやって来たケイクンとハンモックでユラユラ話しこむ。
日本での事カナダでの事、同郷の神奈川県人。
もう明日の昼には出発してまたオアハカだ。
ケイクンからサーフポイントを教えてもらう。どれ今度行ってみよう。
素敵な村らしいぜ。
深い深い眠りにつく。
マスンテの休日。
「ナオキ系ワビサビ」
今日いつもと違うカフェに行くと
いきなり云われた。
「ワビサビ!」
意味が分からずかなり切れ気味に「あっー!」
っと云うと
「ボクデスボクデス!」
っと云う。
顔をよくよく見ると
学校の前で話した、日本語を勉強している高校生だった。
「おっー!おまえかー」
かなりビックリだった。
しかし切れられた高校生はもっとビックリしていた。
そりゃそうだ、あんだけ仲良く「ワビサビ」を語り合った仲だ。
学校が終わり隣の公園でコーヒーを飲んでいた。
すると高校生がやって来て云われた。
「日本人ですか?」
「あーそうだよ」
「僕の名前は何とかです」名前は忘れた
「あなたの名前はなんですか?」
「鬼太郎だよ」
「質問してもいいですか?」
「いいよ」
「ワビサビを教えてください」
「あっワビサビ?っ、カルチャーだよカルチャー」
「どんなカルチャーですか?」
「歌舞伎だよ」
「歌舞伎は何ですか?」
「ハポン ア バイラ-ルだよ。ジャパニーズダンスだよ」
「ペーパードアもですか?」
「あっ障子ね!寿司だよスシ!芸者!っ」
「スシ知ってます。」
「ハイスクール?」
「そうです」
「俺も学生だよ」
「クアントアニョス?」
「17歳です」
「あなたは?」
「鬼太郎だよ」
そんな不毛な会話をしばらくしていた。
そして俺はカプチーノを飲みながら考えた。
「ワビサビ」とは何だろう?
いったい誰が「ワビサビ」なんて云う不毛な言葉を
海の向こうに運んだのだろう?
「トヨタ」「ソニー」「ホンダ」
それが俺の文化で
「ワビサビ」は知らない。
「アイワ」のコンポと「ソニー」のコンポどっちが良いか?
そういう奴とは会話が成り立つ。
「ワビサビ」「ゲイシャ」「スシ」
そういう奴とは会話が成立しない。
しかしそういう奴に限って熱心だ。
それはとても良いことだ。
「ゼン」とは何か?そういう質問もされた。
ネパールでは「ヤマグチグミ」っといきなり云われた。
メキシコでは「シコシコ」っと連呼された。
さてさて俺が伝えることの出来る文化とは?
あっ俺は閃いた!
バックからノートを取り出し紙を正方形に切る。
折り紙だ。
そして「ツル」を折りはじめる。
カフェでバイトしてる高校生もどうやら気になるらしい!
出来上がって持っていく。
「これは何ですか?」
「ツルだよ。バードだよバード。」
軒下の「ハト」を指す。
スペイン語でなんやかんやと騒いでる。
嬉しそうだ、フムフム、いい気分だ。
「ナマエナマエ!」
っと連呼する。しょうがねーなサインしてやるか。
「TULU]&「NAOKI」
奴もこれで少し「ワビサビ」を感じただろうか?
「ジャパニーズアートだよ、プレゼントプレゼント」
子供のような笑顔をされるとこっちもたまらない。
そういえばサカテカスの街でもツルを折った。
お相撲さんを折って箱で相撲を取った。
そのときは
「ジャパニーズ ルチャリブレ!」っと説明した。
出会ったメキシコ人や外人には良く
漢字でナマエをあててやった。
そして意味を話すとみんな結構喜んでくれるし。
漢字がアートに映るらしい。
最近はスペイン語の授業に気を取られて
何か大切なことを忘れていたような気がする。
心ある善良な日本人にお願いです。
だれか僕に「折り紙と折り紙の本」「墨セットと筆&半紙」
送ってくださる徳氏はいらっしゃらないでしょうか?
出来たら楷書の本も贈ってくださるとありがたいのですが。
メキシコじゅうに下手な習字と折り紙で
日本の文化「ナオキ系ワビサビ」を輸出しようじゃありませんか!
なんて思ったりした満月のオアハカ。
ウミガメと遊ぶ
続マンスンテの休日を楽しむ。
こないだと同じ宿に行った。
俺のアドレス帳、使えない日本の携帯を忘れてきた、
毎日7時に目覚ましがなって使い方の分からない宿の女将が
毎日迷惑していたそうだ。
ごめんよ女将とっといてくれてありがとう。
深夜の到着こないだと同じドミのベッドへ行く。
またしても隣がやり始めた。
今回は激しかった。
フルムーンパーティーのなごりであろうか?
俺はコーヒーを沸かし浜辺に行くことにした。
満月から一日過ぎた月、真っ黄色で夜空は青く、
黒いコーヒーに月が浮かんでは揺れる。
バラナシでゴパールから貰ったボロボロの黒いルンギをひいて
コーヒーを飲みつつ一服。
移動の疲れと少々のストレスが夜空に溶けて行く。
すべてがあって、今があるんだと分かったら、
過去のことがすべて終わったことで
今大切なのはこの瞬間の現実だなーなんて思い始めた。
俺も今、この浜辺で風景の一部になっている。
色んな人の色んな過程があって今この景色があるのかーなんて思った。
月夜の浜辺、散歩する人も入れば、しっとりしてるカップル、
いつの間にか俺の隣で海を見ている犬、
焚き火を囲んでパーティーしているグループ。
山と海と雲と月と波と
目を瞑ればさまざまな音、鈴虫の声、月に吠える犬、人の話す声、笑い声。
海の男が歩いてきた。
俺の隣に座る。
「明日、ウミガメを取りにいかないか?」
「何時?」
「じゃー8時にあそこのバーで」
「いくら?」
「150ペソ」
「高いね、何時間?」
「3時間」
「いいよ、じゃー明日。」
「タバコ一本くれよ」
「ほらっ、じゃー明日。」
明日俺はウミガメと泳いで竜宮城へ行くことにした
オランダ人がやってきた。
どうやらそうとう英語もスペイン語も話せないようだ。
年は47歳、子供を置いて、恋人とバカンスらしい。
「彼女は酒のまないんだ」
そんなに悲しげに言われると俺も飲む。
メキシコでのスペイン語が出来ない苦労話しをする、分かる分かる、
俺もドミとかでたまに英語圏とスペイン語圏がはっきり分かれてると、
かかわりたくねーなーとか思ったりするしね。
オランダ巻きとコールが呼んだジョイントをオランダのオヤジと一緒に嗜む。
オヤジはオームの文字を砂に書き出す。
二人で「オーム」
シャンティーだぜ。
そしてオヤジは
「バンザーイ!」と叫びだし海にオシッコしに行った。
「バンザーイ!」っと俺も叫んで見てから隣で連れション。
ここから第2次世界大戦の話しに突入!
しかし時代はアルカイダだなっと落ちた。
したたか酔っ払って宿に戻る。
ハンモックとシオンと右手にモクモク。
初めてちゃんとシオンを聴いた。
それは旅人の歌で男の歌で海の歌でビックリした。
ちっとも痛くなんかなく、ありのままなだけじゃんって思った。
「ペーパーくれよ」っとイタリア人がやってきた。
二人でシオンをハンモックで聴く
話しかけると「今聞いてるから待ってくれ」っと
シオンの分かる男に会えた喜びは
いらぬ気遣いを知らせてくれる。
水の中にいるみたいだった。
電池が切れたところで話しかけてきた。
「ナオキはなんでみんなと仲良くしないんだ?」
「あんまり言葉分からないし、あのフィーリングが苦手なんだよ」
「コミニケーションは嫌いか?」
「好きだよ、けど何かいやだ」
「日本人はあまりはなさないけどどうして?」
「人は分からないけど、俺は恥ずかしいからかな」
「シャイなんだ?」
「ときどきね」
「それに合わない人と無理するのは好きじゃないんだ」
「俺は?」
「いいやつだよ」
「日本のこと教えてくれよ」
「何を?」
「カラテ!明日の朝みんなでカラテトーナメントをしよう!」
「いいねー!」
ホントに優しい奴だった。
英語もスペイン語も片言なのにアメリカ人にはブッシュ批判を繰り広げ、
その他にはいつもチョッカイを出してる。
けどそこにはいつも暖かい笑いが生まれた。
奴のメスカルに付き合う。
ペットボトルで回しのみ回し吸い。
「じゃーあした」
明日は明日、こいつは12時まで起きないだろう。
ハンモックの中再びシオンを聴きだした。
深い深い理解は今は少し遠い。
翌朝、ボートを海まで押した。手の皮が切れるかと思うほど重かった。エンジンをかけ出発。
途中で浮きを外す。
ウミガメはどこかにいる、先頭に立ちひたすら海の影を眺めた。
ウミガメを発見
「飛び込んで捕まえていいの?」
確認を取る。
俺は躊躇なく海に飛び込んだ。
亀の甲羅をギュッと抱きしめる。
もがく亀の頭を水面に出してやり腹を撫でる。
亀はすぐに落ち着いた。
しばらくウミガメと一緒に泳ぐ、甲羅を抱え水の中に亀を誘うと
凄い勢いで進みだした。
ドンドンと潜っていく、
やべーマジで竜宮城に行っちゃうよっと思った。
亀の体をコントロールして水面に連れてって貰う。
やべーまじでウミガメがこんなに可愛いなんて知らなかった!
落ち着いてっと思うと亀は落ち着いてくれる。
ガイドは俺を見て笑ってる。
いい仕事してるよっおまえ、そんなこと思った。
亀を放してやると静かに海の中へ消えていった。
ボートは海を走る。
もう探さなくてもウミガメたちがウロウロしている。
飛び込む抱きしめる、そんなことを何度か繰り返した。
ウミガメかーっまた会いたいなって思ったら。
この綺麗なマスンテの海は汚せない。
タバコのフィルターを持ち帰る。
エコは気持ちの問題だなって思った。
触れればやっぱり繋がる、触れなきゃ分からない。
もっと繋がろう。
宿には少し知恵遅れの男が働いている。
俺はこいつが大好きだ。
静かでハンモックでいつも気持ちよさそうに寝ていて
ご飯をみんなより少し遅れて食べている。
お皿からスプーンでご飯を食べている。
猫が皿に顔を突っ込み一緒に食べている。
気にすることもなく一緒に食事していた。
自然のなかでなら知恵遅れも何もないような気がした。
俺も普通に一緒にご飯を食べる。
昨晩オランダ人のオヤジに云われた。
「ここにいるんだからおまえはリッチだよなー」
って、俺は
「俺ー貧乏だよ」なんて答えた
すると
「なぜ貧乏なんだ?何か足りないのか?」
マジで云われて思った。
全部あるな!マジで。
十分リッチだな、少し心は貧しいけど
そんなことを思い出した。
心も豊かになってきた。
すべてを置いて、今を見れば、狂った奴もいっぱいて
なんてスゲー風景なんだ。
俺も風景だ。
くだらなさの果てはあまりに美しい景色で
地球を掘り進んだら、あらっまた地球だ!
そんな感じだ。
現実逃避のバックパッカー、現実を見る。
あまりに楽しい。狂わしい。
もったいないから
これからは現実をもっと感じよう。
遊ぼう。
エクトル先生
エクトル先生の話。
先生は旅人で20代はずっと世界を回ってきた人だ。
アフリカ、アジア、アメリカ、南米、etc.
僕の旅したところは全て周っていて、その時僕が何をしていたのかも云わなくても分かってくれる人だ。
僕がメキシコでどんな旅をしてきたのかも
地名から人柄からか、全てお見通しのようだ。
先生は次、僕がどこへ行くのかを知っていた。
そしてその方法とスキルを得るためにグアテマラではなく
オアハカを選んだこともよく分かっている。
そして先生はスペイン語の先生なだけではなく
僕の旅のガイドでもあった。
先生はそれに必要な情報と方法とスキルを全て惜しみなく
僕に与えてくれている。
ふと、考えたらビックリした。
たまたま出会った人が
必要な全てをもっていたのだ、惜しげないサラッとした姿に
ナカナカ僕が気づくことはなかった。
クラスに新しい子が入ってきて
僕がドギマギすれば何も云わずに次に日にはクラス換えをしてくれた。
僕の下らないプライドさえ良く分かっていて
「おまえは吸ってばかりで育ちが悪いから、あの子が汚れる!」
みたいなことを云ってくれた。
本当は、学もあり英語もペラペラで僕とは正反対の子に
僕が臆してしまう心を持っていることを良く分かっているのだ。
おかげでノビノビ何でも聞けるし間違っても話せる。
伝えたいことを伝えられる。
先生の話を聞けば聞くほど
俺の話とリンクした。
よくよく考えたらオアハカ周辺で周ったところは
みな先生に教えてもらったところばかりだった。
ガイドブックならぬまさにガイドマンだ。
僕は伝えることは出来るが、どうしても外国語を話せるようにはならない。
きっと今大切なのは当たり障りの無い会話なのではなく、
何がしたいか何をほしってるか、そういうことなので無駄話が出来ないのだ。
きっとそこで暮らすのなら僕は話せるだろう。
ホントに欲したものしか手には入らないものだ。
確かに外人ツーリストとの世間話が一番億劫だ、
時間つぶしのおしゃべりは意識が遠のくから。
今週いっぱいで先生とはお別れする、先生が休暇に入ってしまうからだ。
お別れするには丁度いい時期だ。
僕には行く場所がある。
先生には何でも話が出来る不思議なことだ。
選ぶ必要がないのだ、悪いこともいいこともいつも笑いあって話せる。
旅人特有の広さとでも云おうか?
僕はある場所を目指している、そこに行くにはもっと能力が必要だと感じていた。
それにはスペイン語がもっと必要だと思った。
なぜなら情報を得たり方法を得たりするのは
やはり多少とも語学は必要だからだ。
先生と出会い、今必要なものが全て手に落ちてきた。
だから今すごい上がっている。
風が背中を押してきた。
スペイン語を学び、どうにかしてそこに行くつもりだった。
呼ばれてようが呼ばれてなかろうが。
けど、どうする必要も今は無い。
このまま歩むだけだ。
いつも旅してるとき進んでるとき、
旅しようとしてる時、進もうとしてる時
そこにはガイドがいた。
ガイドが現れた。
旅に入る、ガイドがおのずとやってくる。
気付く、進む、その繰り返しでここまでやって来た。
その間には苦しかったことも沢山あったが
やはり苦しみは、登る山。息切れはするが、
山頂の景色は素晴らしい。
そしてまた苦しみの地へ下るだろう。
けどまた登れば良い
山頂に行きたいと思えばシェルパーが現れガイドが現れ
持てない物を持ってくれたり
道案内をしてくれる
心強さを忘れたくない、苦しみに甘んじてると
俺は忘れてしまうのだ。
今、先生がいる。
心強い。
素敵なビーチも素敵な山も素敵な人も出会わせてくれた。
準備が出来たら出発
まだしばし時間はある。
さっもうちょっと訓練だ。
見えた直感。
正月ピラミッドには登れないか?
その前に行く場所がある。
仲間という名のガイドたち
ありがとう。
背負ってくれたり案内してくれたり
おかげでここまで来れた。
嫌いな授業も今は楽しみだ。
もうすぐ始まる次の旅。
エクトル先生の話を書こうと思ったが
やっぱり自分の話になってしまった。
まーよしよし。
俺もボム
メキシコ人はどこでもやる。
ドミでやるのはそんな珍しくないそうだ。
「普通だよっ」
先生に軽く云われた。
俺もやろう。
ドミで
ドミがイイ!
人がいっぱいいたら尚更イイ!
っが、クリスマス前だからか
だだっ広いドミには俺一人
いやっ、まず相手がいないっ。
街中でエロエロしている。
普通だっ。ここでは普通だ。
やれるときやるもんだっ。
過去のチャンスの後悔が頭をもたげる。
俺はいったい何をしていたんだ?
北海道では子作りに励んでいるというのに
俺は思ってた。
Bまでがエロい、確かにBまでがエロい
しかしBよりもCだろ
なぜならBよりもCの方が気持ちい!
今日俺は先生に言った
「超やりーてんだけど!」
先生は地図を持ってきた、
「ここにパラダイスがある!」
脳が云う
「早く早く」
何だ?
興味が疼く。
まだ昼間だ、書きながらも脳は
「早く早く」
っと急かす。
うーん何となく
どっぷり浸かりそうな気がする
退廃のお香がたちこめる
大好きな居心地イイ匂いだ。
甘ーい香りがする。
そんなことやってちゃダメだっ
なんて声は聞こえない
あー聞こえてくる
いいじゃんっいいじゃん
行こうよ行こうよ
バモスバモス!
じゃー今夜ね。
どうやら優しすぎるんだ
事情を考慮し過ぎるきらいがある
めんどうは嫌いだ
肉は肉
ハートはハート
ハートと肉がコンボなんて
あまりにもナイスコンボ。
っで混乱する。
今夜は肉を食べる。
週末はハートを食べる。
明日は学校のキャンプ
けっ俺だけペラペラしゃべれねー
インテリどもが
蹴散らかしてやる
屈折している。
とは思いつつも笑顔で受け入れてくれたら
俺もニコニコ
ご機嫌。
昨日、いつもビルの門の前に立つ男が話しかけてきた
そいつが話しかけてくるのが3度目だったので
俺も答えた。
ちょっと怪しいやつだ。
黒いシャツに灰色のベストのセーター、そして黒いブーツ。
話してみると
イイ奴かも
ネタが切れそうなのを思い出した。
こいつイイの持ってそうだな
そんなことを思い聞いてみた
「仕事なにしてるの?」
奴は笑った。
そしてベストを脱いだ。
見慣れたワッペンの付いた黒いシャツだった
「アイムポリス!」
笑うしかない
「悪いことしたら捕まえちゃうよ」
奴はご機嫌に笑って云った
奴とは今日も学校帰り立ち話しをした。
「ヒロシマ、ボム!」
俺もボム。
手紙
昨日夜。
イタリア人とメキシコ人と日本人の一見良くわからないグループからディスコテカに誘われた。
ディスコ!来たー!
「あっはい行きます!」
また即答だ。
ところでこいつら何なんだ?
話を聞いてみるとバルセロナからのグループだ。
みんなそれぞれバルセロナに留学していてそこで仲間になり
またそれぞれの国に帰っていった。
そして2年近く経ちメキシコでみんなで集まって旅行しよう
っと云うことになったそうだ。
素敵な話だ。
同じ時を過ごした仲間とアメ車のバンでメキシコ旅行
そんなグループに俺は興味を持った。
宿題をやりながら日本人のアキコさんにスペイン語を教えてもらう。先輩発見である。
宿題をしながらお互いの話を少しする。
「昨日夜すごい良い匂いがして来たんだけど、みんなで何人かなーって話してたんだよねー」
おっどうやらイケル口らしい
「みんなに話しかけろって云われて、でも、中国人だったらどうしよって思ってて」
「いやっ韓国人なら分かるけど中国人はなー?」
面白い人だ。
「あれ少しある?」
「あっいいすよ」
そんなところから彼女の仲間が集まってきた。
自己紹介の始まりだ。
「こっちがイタリア人の。。。」
相変わらず自己紹介で名前を覚えることが出来ない。
5人の自己紹介が終わる。
みんな俺の名前を覚えてくれたのに
俺は一人も覚えられない
そう、単語を覚えることが苦手なのだ、語学不向き。
悪いなーっと少し思う。
まーいいさっ顔はしっかり覚えたぜ。
このホテルにいる外人連中はみな名前を覚えてくれた、
「ナオキーシャワーが冷たいよ!」
「俺に言うなよ」
そんな感じだ。
なんか良い感じっ、けど
俺はあいつらの名前を全然知らない。
あいつらが自己紹介しあってるのを聞いて
あっそういう名前だったんだーっとビックリする。
そろそろ覚えやすいようにあだ名でも付けよう。
自己紹介も終わりワイワイとやっていた。
そして11時に行こうと約束した。
ウキウキだ、いっぱい踊っていっぱい飲もう
宿題を片付け
音楽をかける
ラビシャンカールをかけてると
メキシコ人の大学生が「シタールはいいよなっ」
っと、分かる奴がいる、それは
居心地の良い場所だ。
俺はタックンから貰ったエグザイルスを読みながらウトウトする。
11時になりアキコさんが迎えに来た。
大きなリングのピアスと整えられた髪、お化粧。
うわーマジ可愛いチョット低い鼻がまた可愛い。
俺は両膝の破けたジーパンにココから貰ったモロッコブーツ、ユーレンとおそろで買ったセーター、
チベットで買ったニットキャップ。どこへ行くにもいつもそれ、
お洒落より愛着なのだ。
「これでいいかな?」
そんなことを云う俺
お洒落が極まってる女性の隣りは何だかソワソワする。
ロビーにみんな集まり出発。
ワイワイしている、良いフインキだ、みんなホント仲間なんだなーって感じが暖めてくれる。
まずはバーに行ってビールを二杯
あー楽しい。
みんな良い顔してる。
そしていざディスコテカへ!
楽しみでしょがない
歩きながら話をする。
「みんなさー時計もガイドブックも何にもないんだよー」
あー分かるホントみんな何も持ってない
「けど、結局みんなあたしの見るんだよねー」
あー分かる、必要ないとか云ってそのくせ良く腕時計を覗いてくる
ディスコに着いてテキーラのボトルを頼む
みんなでサルーっと乾杯しては飲み干し
手の甲に塩つけ舐める
レモンをかじり、唐辛子をかじる
そしてまたサルー
なんだか覚醒してきた。
全部で5杯くらい飲んだだろうか?
久しぶりに踊る。
メキシコ人は男女で手を合わせて踊るととたんに踊りが上手になる、
クルッと回って息のあったステップを踏む。
もう見とれるしかない。
俺は次に日キャンプだった、みんなに気使わせるのもなんだし
それにもう十分楽しんだ。
みんなのおかげで楽しかったよ、後は仲間で。
俺も眠くなって来たし。
仲間のメキシコ人の男の子にお楽しみプレゼントとペーパーを渡す。
「みんなによろしく、明日早いから帰るよ、今日はありがとね」
宿に歩いて帰る、心地良い風が吹く街灯の下タッションする。
明日のキャンプも楽しければいいなーなんて思いながら
朝7時起床、夢の中でも一緒に踊りワイワイしていた。
アキコさんのグループは今日オアハカを発つと云っていた。
シャワーを浴び髭を剃ってると不図思った。
お別れ云いたいなーって
でもみんな朝まで遊んでたから起こしたくないなー。
手紙書くか?
メモ帳を取り出し、5行くらい
楽しかったこととみんなによろしく
何も云わずに帰ってごめんなさいっと
みんなの部屋のドアに走り書きみたいなものを挟む。
そして学校に行った。
今日はバンでキャンプと聞いてたのに
実はオアハカ物産展巡りみたいな感じだった。
ご機嫌超斜め。
でかいマーケットで勝手に触って匂いを嗅いで楽しんでると
先導の先生に怒られた。
「ちゃんと尋ねてからじゃないとダメだよ、買わなきゃいけなくなるかもしれないだろ、
トラブルのなんたらかんたら」
俺の逆鱗に触れた
カチーン!日本語が出てくる。
「おいっコラ!余計なお世話だよ、何テメー俺のやることに口出してんだ?
おめーに言われる筋合いねーんだよムカつくなー!」
先導の先生に歩み寄る。
楽しいみんなの課外授業に暗雲が立ち込めた。
すると海外青年協力隊の日本女子に云われた。
「オアハカならいいかもしれないけど、グアテマラなら何が起こるか分からないよ!それに常識でしょ!」
かぁっー、こいつ絶対学級委員長やってたよ
一番苦手なタイプだ。マジメちゃん、どこへ行ってもこの手の女子から叩かれ続けた。
反論するとろくな事がない
常識?これが俺の常識だよっと反論したかったが
これ以上興奮したくないので止めた。
中学校を思い出した。最後は泣かれて悪者。
そして俺は逃げた。
「先生ここ何時まで?一人でみたいんだけど」
でかいマーケットを歩きながら珍しい珍品など目にも入らず
悪者になった記憶がひたすら流れ続けた。
あっという間に時間が経ち
バンで学校に戻った。
さよならも云わずに帰る。
無言の抵抗は少しなさけない。
宿に帰り誰もいないドミのベッドで午後の日差しを浴びる。
気分が優れない。
なんだか落ち零れの気分だ。
今日はまだコーヒー飲んでなかったなー飲みに行こうか?
あーけど億劫だなー。
起き上がり棚の上に置いてある水を飲んだ。
見慣れないものが目に留まった。
綺麗な便箋の手紙である。
ベッドに寝転び読む。
アキコさんからだ。
アキコさんは酔っ払ったまま手紙を書いてくれた。
俺が書く前に書いててくれことが嬉しかった。
すれ違いで手紙がお互いに届いたわけだ。
アキコさんには朝届き。
俺には午後届いた。
内容は俺が書いたことと殆ど一緒だった。
不思議なものだ。
午後の日差しが心地良い。
そしてもう宿には彼女たちはいない。
そして明日もインテリどもとの戦いが始まる。
次は負けないっ!泣かしてやるっ!
サイボーグ
クリスマスイブみんなは何を食べましたか?
僕はサイボーグを頂きました
おいしかったです。
神様ありがとう!
こんなとんでもないプレゼントを
いやーミラクルだよミラクル!
ふざけな馬鹿やろー
次は俺も怒るぞ!
注文と違うよー!
いいかげんしろよっと
同じミラクルでも何か他にあるだろっ
まっ楽しかったけど
次、ミラクルプレゼントをオーダーするときは
「あっじゃーお勧めで!」
なんて云わず
これください!っと
ちゃんとオーダーしよう
じゃないとお茶目な神様は何を持ってくるか
分かったもんじゃない。
みんなも気をつけて
特に男子!
「なんでもいいから穴はねーのかよ?」
なんて思ってると
お茶目な神様は
「今日のお勧めはサイボーグです」
なんて平気な顔して持ってくる。
「へーっ!サイボーグ?まだ食べたことないなーどんな味?」
っと、すっ呆けて食べましょう
ミラクルな味がします。
けどっ、これは
クリスマス限定特別メニューだったのかも?
粋なプレゼントだったぜ。
ありがとうカミさん。
DORAGON VERDE
スキンヘッドのメキシコ人パッカー
その名は「ミゲル」
いかれた男だ。
今回の旅のために奴は3ヶ月前からテキーラに緑を漬け込んだスペシャルボトルを持参でやってきた。
とんでもない代物だった。
クッキー、ブラウニー、ラッシー、ピザetc
世にはハッピーなシェフが沢山いる。
ここにもまたいた。
俺たちは会ってすぐ仲良くなった。
最初のお互いのヨソヨソしさが良い。
こいつとは大丈夫かな?みたいな感じで
なのに本当は直ぐに本題に入りたい。
同志か確認出来れば話は早い。
話して5分でブラザーだ。
リアルデカトルセ、マルガリータ、サンホセデルパシフィコ、ウアウトラデヒメナス。
奴の旅先と俺の旅先がリンクする。
「お前も好きだなー!」
「タンビエン!」
話は大きく盛り上がった。
ストーン、グりフォ、ブリブリ。
いらん言葉ばかり教えあう。
ジャニスとレッドツェペリン、ボブとフィッシュ
ウォークマンのイヤホンを分け合う。
俺も盛り上がってきた、
旅先で音を分かち合えることは
肌を触れ合うことよりも
時折、心を動かす。
俺は話し出した
「いやー実はさっ昨日のクリスマス、スゲー可愛い子がいて目が合ったのよ、
そんでそのまま歩いたんだけど、また振り返ったらまだ見てるの!
あれっと思ったら手招きされちゃって、そんで俺も男の子だから気になるじゃん、
近づいて話しかけたの、でも俺日本人じゃんスペイン語難しくてさー、
そんで旅行用のスペイン語ガイドで色々話してたの、
そしたら、外も寒いから部屋の中で話そうって云われてさー!
バモスバモスってビルの階段上がって部屋に入ったのよ。
いやー来たね!これっ最高っと思ってドキドキしてたら、もうイキナリ見つめられて
Tシャツ捲られてちゃって、もうお手上げよ!そんで始まっちゃった訳、メヒカーナ半端なくてさっ、
もう攻められっぱなし服も全部脱いで無いのにカモ-ン!ってやられちゃって、
いやー最高のクリスマスだなって思ってたんだ。でもさー何か違うんだよ?何がって?
だからそのーなんて云うの穴がたぶん違うんだよ。穴がさー。
そんで一応チェックしたわけ、そしたらやっぱり違うのね!そんで上の方に手を伸ばしちゃったんだなっ!
あるんだよあるの!あれがっ!もうー頭真っ白、なんだーいったいなんだー何が起こってるんだ?
これは何だ?こいつは何モンなんだ、そして俺は何をしてるんだ?オイッ今日は神聖なイブだぞ!
俺だって今日教会行って少しはお祈りしたんだぞ!ファックユー!でもさー顔見るとスゲー可愛いの!
クリクリした目で見つめてるの、でもよく見ると少年の目なんだよ、
嬉しそうなの、俺もここで気合入っちゃってさっ!
究極の選択の瞬間ねっやるなら最後までだなって思ってやっちゃったのよ!もうダメ!!!
だって気持ちいんだもん…」
奴は大声を上げて笑った。
「ナオキー!」
奴は俺の肩を強く抱いた、分かってくれるかミゲル?
男のイナナキを、月に向かって吠える駄馬のイナナキを
奴は云った。
「グラシアスナオキ!今日はスペシャルデイだっ!俺はスペシャルドリンクを持っている。
今日初めて開けるんだ、一緒に飲もう!」
ミゲルはバックパックからボトルを取り出した。
メスカルのボトルの下に大量の何かが漬け込まれている。
「おいっミゲル、これは何だ?」
奴は満面の笑みで云った。
「MOTAだよモタっ!テキーラに3ヶ月漬け込んだんだ」
俺は最高に興奮した。
「これ名前あるの?」
「あーDORAGON VERDEって云うんだよ、ナオキコップ持ってるか?」
俺は灰皿兼湯沸しコップ、チベットからの相棒のステンレスコップを持ってきた。
そしてバルコニーでコップに水を入れ軽く濯いで外にまいた。
「ヘイっミゲル!」
俺は渡した。
奴はドクドク注ぐ、水面にはシードが3粒泳いでる。
「ナオキー!ムイボニートだろ、ほらっスイミングしてるよ!」
奴は子供みたいな顔で笑ってる。
どうしょもない奴だ。
だが俺の顔も見せられたモンじゃない。
「ナオキっサルーって日本じゃ何て云うんだ?」
「カンパイだよ」
「じゃーナオキから」
「カンパイ!クリスマスそしてミゲル」
俺はグイグイ飲んだ。
テキーラと緑の香りがそして味が鼻から胃袋まで染み渡る。
「カンパイ!ナオキそしてクリスマス」
奴はグイグイ飲んだ。
二人で300mlを3杯回し飲み。
こりゃーとんでもないしろもんだ。
俺は酒がずばり弱い、そしてミゲルに云う。
「おいミゲルー…俺明日9時から学校!いやー明日が楽しみだよ」
ミゲルは云う。
「明日学校っ?頭も冴えて勉強はかどるよ!」
奴はかなりうけてる。
「ミゲルはどこ行くんだ?」
「明日はこれ持ってモンテアルバンのピラピッド登るよ!」
俺はかなりうける。
バカだこいつは、本当にバカだ!どうしょもない。
バカに出会えた感動は大きい。
「えーっとこれ何て名前だっけ?」
「ドラゴンベルデ!」
「おー決して忘れねーよ!ありがとう」
そしてそのまま俺はぶっ倒れた。
東京ベルディVSドラゴンベルデ
同じ緑でも
勝者は後者。
俺もファンだしね。
ウアウトラデヒメネス 個人的体験談
2005年12月28日
俺はウアウトラデヒメナスを目指した。
38度の高熱の中
深夜、乗り合いバンに乗った。
暗闇の中、山と夜空は一緒で
山の斜面を這うように走るバン
窓から外を覗くと星はグルグル回っていた。
「あー星が空がグルグル回ってる…」
いやっ回っているのは俺の乗ってるバンだ。
「あー俺がグルグル回ってる…」
38度の高熱と関節の痛み、倦怠感。
何が止まってて何が動いてる?
そんなことはどうでもよく、乾いた喉が咳き込んだ。
眠りの中、フト思う。
「どこに行くんだっけ?」
いやっ眠ろう、もう少し眠ろう。
オリオン座が北に東に西に南に
グルグル回ってる。
世界を認知するには少し熱が高すぎる。
記憶の遠い5時間の移動、深夜2時
ウアウトラ デ ヒメネスに到着した。
街の中心部から少し離れた場所で下ろされる。
オレンジ色の外灯が光る。
さーどこへ行こう?ホテルか、ホテルに行かなきゃ。
アキラの小説「神の肉テオナナカトル」に出て来たホテルを思い出した。
5月1日ホテル、村上春樹の小説にでも出て来そうな名前だ。
MAYO DE UNO HOTEL
声を掛けて来たタクシーに乗り込む
「MAYO DE UNO HOTELまで…」
2分で着いた。
20ペソ払う。
11号室のドアを開ける、ベッドに倒れこむ。
シャワーを浴びよう、靴下を洗濯しよう。
熱がある、寝ればいいのに動き出す。
熱いシャワーを浴びる。
移動で凝っていた筋肉が緩和されていく。
熱いシャワー浴びながら靴下をゴシゴシ擦った。
コーヒーを入れよう、音楽を掛けよう、日記を書こう。
体と遊離された意識が
俺を動かす。
パーカーを着込みベッドに潜り込み日記を開き、コーヒーを飲む。
ジョンレノンはこの街、ウアウトラ デ ヒメネスで
マリアサビーナと云うシャーマンから神の肉テオナナカトルの儀式を受け、
何かを知り、「LET IT BE」の歌を作ったと言う。
この街でかー?俺は、「LET IT BE」を聴こうとCDをかけた。
あるがままに、なすがままに。
そう語りかけるジョンレノンの歌声の中
パーカーを頭にかぶり眠りに着いた。
俺はこの街に何しに来たんだろう?
素朴な疑問の中、呟く…
あるがままに、なすがままに。
神の肉テオナナカトル
AKIRA 神の肉テオナナカトル
マリアサビーナ
マリアサビーナ
イネスに出会う 2005年12月29日
朝、空は青かった。
北に面した3階の俺の部屋から街が見渡せる。
うわー!凄い!街は山々に囲まれ森と町がごちゃ混ぜだ。
少し体調が良い、顔を洗い歯を磨き、ウアウトラの街へ一歩足を踏み出した。
露天が立ち並ぶメルカドを歩く
マサテクの民族衣装を纏ったオバーちゃん、テンガロンハットが板につく日焼けしたおっさん。
街には活気が溢れていた、メルカドの裏手の小さなマサテクのおばーちゃんが営む飯屋で
「チポ」ヤギ肉のスープを飲む。
ヤギ肉の臭みとパクチーみたいな香草が体を芯から温めた。
街をフラつく、もう少し自然のある方へ歩こう。
街の中心部から離れていくとロバが薪を運び七面鳥が歩き猫と犬が体を寄せ合い日向ぼっこしている。
山と山が織り重なり合い家々がその斜面に点在している。
太陽は眩しかった。
空は雲を東から西へと運んでいた。
再び街へ戻る息切れがする、休憩がてら子供達が集う小さなネット屋に足を運んだ。
日本語が使えない、日本語も読めない。
こんな小さな街だ、しょうがないかっ…一応店員に話しかける。
「IMEの日本語インストールできるか?CDある?」
気さくな店員はCDを探し出し俺に渡した。
しかしインストール失敗、店を出ようと店員のところへ行き話す。
「上手く行かなかったょ」
「えっ何が?インストール出来ない?」
拙いスペイン語で状況を説明しようとするがナカナカ上手く行かない、気のきいたオバちゃんが状況を察したのか店員に話している、「彼は日本人で日本語でネットをしたいそうよ、けど使えないって云ってるわ」
そんな感じだろうか。店員は事情が飲み込めたらしく俺に笑いかける。
俺はオバちゃんに「グラシアス!グラシアス!」と語りかける。オバちゃんと俺は話し出した。
あなたどこから来たの?名前は?そんな旅行にありがちな会話だ。
「俺?ナオキ。メジャモ、ナオキ!あなたは?」
オバちゃんは云った。
「わたしの名前はイネスよ。」
俺は聞き返した。
「イネス?あんたがイネス?、えっもしかしてシャーマンのイネス?」
「イネス?あんたがイネス?、えっもしかしてシャーマンのイネス?」
オバちゃんは笑う。
「えーそうよ。」
俺は興奮してグレゴリーのポシェットバックから本を取り出した。
「アキラの本を読んでここに来たんです。これがその本です。」
オバちゃんは優しく俺に語り掛けた。
「アキラねっ知ってるわよ、よかったら家に遊びにいらっしゃい」
俺は運命の歯車が回りだした興奮にネットどころではなかったが、イネスが云った。
「いつ?」
俺は少し混乱気味に答えた。
「えーっ、じゃーっ30分後!」
イネスは云った。
「えーじゃー息子のミゲルを30分後迎えに行かせるは、場所はここで良いかしら?」
俺は
「はいっ!ここで30分後…グラシアス。」
「じゃーあとでね。」
イネスは街へと消えた。
俺は熱でボーっとする頭を抱え、突然やってきた展開を理解しようと努めた。
この街に来るのに情報なんてアキラの本と通っていた学校で探し出してコピーしたこの街のいい加減な地図だけだった。
かつて世界中のヒッピーがこの街に押し寄せた。ヒッピーの蛮行により村が混乱を極め、軍によって街へ行く道路が封鎖されたと云う。外国人に対して冷たいかもしれない。ましてマジックマッシュルームによる儀式を受けたいなんて、マサテクの文化も理解していない外国人が言ったら反応はどうだろう?難しそうだな…。それにスペイン語出来ないし。
それが俺の考えていたことだった。
けどっ行かなきゃわからない、行ってみよう。
それがオアハカを出発するとき思っていたことだ。
探すまでもなく、突然マリアサビーナの系譜を引くイネスと云うシャーマンに出会った。
旅をしているとこういうことが頻繁に起こる、旅が始まる。
そして眠っていた神経が呼び覚まされる。
ネット屋で再びインストールを試みつつ、神経が張り付めてきた。俺の大好きな感覚で、この感覚だけを頼りに旅の進路を進めてきたと云っても過言ではなかった。
「来たっ」
俺はふと呟いた。
インストールに失敗した頃、息子のミゲルが迎えに来た。
アキラの本の中にも登場するミゲル。
俺の中でアキラの本「神の肉テオナナカトル」は少し神話めいたところがあった。
その本を読み作り上げられたイメージそして感じ取ったことそれは様々だ。
そして何度も旅に出る前も旅に出た後も何度も読み返した。
その本は、心のどこかである種の神話となっていた。
そして今、俺もその神話の中に組み込まれた。
そんな驚きと感動と、これから進んでいくだろう世界に胸が高鳴り、不安と「何かが起こる」その確信が俺の目を開かせた。
「何かが起こる」その確信は今も続いている。
イネスの息子と共に坂道を歩き出した。
屈託のない無邪気な笑顔に俺は安心させられる。
家に案内され、家族の紹介を受ける。
俺はぎこちない笑顔でパパのフエベル、二人の可愛い花盛りの娘、パパフエベルの弟など握手を交わしていく。
そして紹介も終わったところでイネスと話す。
スペイン語旅の会話帳を取り出し、セレモニー、儀式を受けたい宗を伝える。
どうにか上手く伝わったようだ。しかし俺の拙いスペイン語でちゃんと儀式を受けられるだろうか?などなど心配は尽きなかった。
「えーいいわよ、いつが良いかしら?」
イネスに云われる。
「えっ?いつでも、いつでもいいです。」
俺は考えていなかったのだ。
「そう、じゃー今日の6時でいいかしら?」
「あっ、はいっ、じゃー今日の6時ですね。」
またドキドキしてきた。
いてもたってもいられなくなりこの場から逃げ出すように俺は云った。
「あっじゃっ、6時にここにまた来ます!」
イネスが困惑の顔を見せる。
「あっ、わかったわ6時にここでね、ところでどこへ行くの?」
そんなことはこれっぽちも考えていなかった。
「えっええーとっ、ねっネット屋に…」
「えーいってらっしゃい、じゃー6時に待ってるわ」
「はいっ!じゃー行って来ます」
俺は駆け足で自分のホテル、5月1日ホテルに向かった。
部屋に駆け込む、まだまだ6時までは時間がある。
時計を見れば、まだ正午にもなっていない。
体の具合も忘れていたが十分悪い、寝よう!休もう!
何か食べておかなきゃっマッシュルームを食べるためには胃を空にしとかなきゃならない。
まだ時間はある、フルーツを少し食べて寝よう。
露店街にバナナとリンゴを買いに行き、部屋に帰った。
瑞々しいリンゴを頬張り、人差し指くらいのバナナをゆっくり食べる。
目覚ましをセットしベッドで大の字に寝転がり、ここまでの旅の道程を反芻する。
サカテカスのドミトリールームでバスク人のユレンと知り合ったきっかけは寂しい夜にユレンがマリアサビーナの伝記を読んでいたからだ。そして俺は声を掛けた。それがきっかけで仲良くなりお互い言葉も通じないのに二人でぺヨーテを目指しリアルデカトルセまで行った。
そこでフランス人ココと知り合った、たまたまバスが一緒だった。3人で部屋をシェアしチャラスを吸いながら旅を語った。
目的は同じだった。ぺヨーテを体験したい。
ココはペルーでのアヤワスカでの体験を大きなジェスチャーで僕らに語った。微かな情報を頼りに3人で馬を借りサボテンの多い茂る乾燥地帯を6時間体中棘に刺されながら探した。
何も見つからず、3人でトボトボ帰った。
その夜レストランでご飯を食べイタリア人のやってるバーに飲みに行った。そしてリアルデカトルセに住む8年住むイタリア人のガイドを紹介され、みんなでキャンプに行ったなー。
そういえばキャンプ中警察が来てみんな血眼になって逃げたよなー。そんなこんながあってここにいるんだよなー。
再び熱を感じ始め意識がまどろんで来た。
俺は夢の中に入っていった。
シャーマン イネスのセレモニー
夕方4時半目覚ましが鳴る。
俺は起きてシャワーを浴びて目を覚ましイネスの家へと向かった。
イネスの家に着く、するとメキシコ人の学生が2人来ていた。
自己紹介を交わす。俺と同じく儀式を受けに来たようだ。
お互い若干の緊張が隠せない。
7時を回った頃、セレモニーの部屋に案内される。
8畳ほどの部屋だろうか、コンクリート剥き出しの壁とマリアの絵が沢山掛けてある祭壇がある。ベッドが一つ置いてあり床は土間だ。
床にメキシコ人の学生が寝袋を広げる、美大生の彼らはスケッチブックと色鉛筆セットを取り出した。
どうやら繰り広げられるであろうビジョンを書き写すつもりなのだろうか?
俺はベッドに案内される。ベッドに座り壁にもたれ掛かった。
お互いの拙い英語で軽く話す。
イネスがやってきた。
儀式はいきなり始まった。
イネスが呪文のような言葉を唱え始める。祭壇のあたりで何かブツブツ呟いている。
琥珀の化石をメラメラと燃える炭の中に入れる。
白い煙と共に意識を洗うような香りが部屋中に充満する。
始まってるんだ、俺たちはイネスの一挙一動に集中しだした。
祭壇の前にバナナの葉が3枚用意されている。
バナナの葉の上にサンイシドロのキノコが並んでいる。
幾つあるだろうか?一つの葉の上に20数個くらいだろうか?
イネスからバナナの葉を渡される。
確認するともう食べて良いらしい…俺たちは食べだした。
お腹が空いていた俺はモグモグ凄い勢いで食べだす。
けっこうおいしい、味噌汁に合いそうだ。
メキシコ人の学生は顔をしかめている。
きっと美味しくないのだろう。
俺はただお腹が減っていたので沢山食べたかった。
モグモグ、あーもっと喰いてーなーっそんなことを思ってると
注意された。
「もっとゆっくり食べなきゃ…」
学生に云われた。
「はいっ」
そうだ儀式だもんな、これが神の肉かー、アキラの本にも書いてあった、マリアサビ-ナは小さい頃貧しくお腹を空かせていたから森へ行ってよくキノコを食べていたそうだ。
きっと俺もその頃ここへいて貧しかったら森へ行ってムシャムシャキノコを食べていたに違いない。
神の肉だろうが何だろうが食欲には関係無さそうだ。
イネスが部屋から出て行く。
俺たちは自己紹介を交し合う。
彼らの名前はグスタボとポロ。
旅の話をする、グスタボとポロもリアルデカトルセに行きぺヨーテを食べたそうだ。そんな話をした。
1時間位たった頃、意識に変化が現れ始めた。
イネスがやって来た。俺たちに確認をとる。
キノコの効果を知るためだ。
再び儀式が始まる。
イネスが琥珀を握り俺の体へ手首膝など押し当てていく、イネスの呟く呪文のような声が不思議だ。
服を捲られお腹に触れられた時、今まで感じたこともなかったものを感じた。
なんの電気だこれは、体中が振るえた。
変性意識状態に入ったようだ。
客観的意識は驚くほどしっかりしている。
俺は座禅を組みヨガの鼻呼吸をしだした、タンを吐き、鼻水をかみ、呼吸を整える。
普段感じることの出来ない気と呼ばれるものだろうか?
びっくりするくらい感じる。
冷静に認識できるほど気の流れを感じることが出来る。
空気を吸う、一緒に気を吸ってることが良くわかる。
あまりの驚きで俺は気に集中しだした。
右手を広げそこに気を集めるとエネルギーに満たされる。
俺の体に今まで浸透いていなかった分の気を
俺は呼吸から大地の無限に溢れているかのような気を少しずつ取り込み始めた。
体が温かくなってくる、上着を一枚脱ぐ。
呼吸と気に集中しだしてから段々と意識が冴え始めた。
普段自分が包み隠していた意識が外に向かって開かれていく。
意識の中に、何かと戦う力が宿り始めた。
もう少し力が欲しい、呼吸に集中し意識を徐々に上げて行った。
自分の内面に潜む隠された傷や普段どうしても目を背けてしまう隠された出来事、そういった自分と向き合う力を感じた。
俺は自分と向き合う準備をするため拳を握った。
俺たちを見守るイネスが歌いだす。
男たちが意識をあげようと自らを奮い立たせようと頑張っているとき、イネスは歌いだした。
優しい優しい賛歌だ。
イネスの歌声に見守る姿に俺たちは勇気を得た。
脳内のセレトニン結合がマッシュルームのシロシビンによって遮断され海馬から無限の情報が溢れ出てくる。
適切なシャーマンやガイドの力なくしては危険な状態であると思う。弱った自我や受け止められない状態のまま個人接収してはパラノイアになる恐れがある。
イネスの導きに従い自分と言う者の目をしっかり開き、向き合う情報を選択していく。
16歳で家を出た俺は育ちが悪い。
小学6年生のとき中学受験戦争に巻き込まれ母親の指導の下塾へ通った。
子供だった俺は、凄まじいプレッシャーの中、最後に壊れた。それは俺にとってあまりに悲しい出来事だった。
そこで今の自分と子供の自分が遮断されていた。
壊れるくらいなら手段を選ばず戦うし逃げるし生きる。
それがそれ以降の行き方だった。
色んな人に愛されてきたが、愛を感じることを恐れていた。
その先に常に恐怖を感じていたのだろうか?
子供の頃の苦しんでいた自分が現れる。
今大人になった俺がそれを見つめる。隠されていた痛みを再び思いっきり感じる。
まだ母に抱かれて眠りたかった頃、母から逃げるしかなかった。
しかし、その先は誰も抱きしめてくれる人がいないことを知っていた子供の俺がいた。
俺はただただ恐怖に怯えていた。
一人で寂しく辛かった。
孤独っという言葉を再び知る。
イネスの見守る姿に力を得て呼吸をして
かつての孤独な自分を抱きしめる。
スーッと自分に溶けていくのが分かる。
当時の母の行き違えた愛情もスーッと自分の中に熔けて行く。
否定し続けて来た母との様々なことが溢れ出来る。
非行に走る俺を「ナオキ!ナオキ!」と呼ぶ母の声がする。
当時の俺は聞いて無かったが、母は俺の魂を呼んでいたのだ。
母の愛を否定し続けて来たがゆえに辿ってきた道があった。
今は母を抱きしめたい。
自分の全てを受け入れたい、そんな思いがあった。
それが旅へと向かわせたのか?
そして今ウアウトラでこの部屋で俺は繋がろうとしている。
自分を受け入れるとは物凄い力を必要とすることだ。
途中で力がなくなれば元の木阿弥。
今は、キリストの血、神の肉、テオナナカトルと呼ばれるマッシュルルームとイネスの力と自分の中に眠る力を得て戦おうとしていた。
初めて人やお金以外から力を得る方法を見出した俺は生まれて初めて生まれようと命を燃やした。
生まれ変わるのではなく、生まれようとした。
命を燃やした。
不思議な感覚に包まれる。
まるで自分独りじゃないみたいだ、何だろう?
俺を包んで同じくらい俺と一緒に命を燃やしてる人がいる。
母だ。
お母さんだ。
俺は自分がこの世界に生まれようとしてる時の事を感覚的に思い出した。
赤く熱く全身全霊で一つのことをしようとしてる。
そしてその時の俺を世界に生み出そうとする、母の凄まじい力とエネルギーを感じた。
俺はこの世界に母と一緒に力を合わせて命を燃やして生まれてきたのだった。
それを俺はこのとき知った。
そして俺は生まれた。
初めて男になった気がした。
全身に有り得ないほどの力が溢れる。
目を今に向ける。
イネスとグスタボとポロがここにいる。
俺は生まれた喜びから再び自己紹介をする。
一人のこの世界に生きるありのままの俺として挨拶をする。
一人の人間として向き合いグスタボと力強い握手を交わす。
ナオキ、グスタボ、ナオキ、グスタボ…俺たちは何度も何度もお互いの名前を呼び合った。
名前には魂が宿る。
言霊というがそれは本当だ、言葉には力が宿る。
俺たちは意識を高めあった。
今まであまりにも言葉を大切にしてこなかったことを知った。
グスタボが云った。
「エルマノス!」
俺は云った
「兄弟!」
そして心から笑いあった。
イネスからも笑顔が溢れた、ポロとも握手を交わす。
みんなが一つになった。
イネスの息子ミゲルが俺も仲間に入れてよっといった感じで部屋に遊びに来る。
ミゲルはベッドの上の俺の隣に寝そべり笑顔で自分の背中を指差す。
マッサージしてよと、わかったよ。
俺はミゲルの背中をマッサージし始めた。
変性意識状態を利用して俺はアクセスを試みる。
再び気に集中してミゲルの体を揉み解した。
5分と経たない内にミゲルは寝息をたてる。
俺は暫くしてマッサージをやめた。
ふーっこいつはスゲーやっ自分でビックリした。
ミゲルが目を覚まし俺に云う、
「グラシアス」
「デナダ」
グスタボやポロから質問攻めに合う。
どこで習ったんだ!どのようなマッサージだ?
なんとも云えない。
「マイ、マッサージ?マッシュルームマッサージ?」
場に笑いが零れる。
「おーチャンピオーネ!」キノコのスペイン語だ。
イネスもゲラゲラ笑ってる。
場が一段と和む。
再びイネスが歌いだす。
「寒いね、冷えたねっ」と声を掛け合う。
ベッドの上でイネスの側に皆寄り沿い、寒がるイネスの肩に毛布を掛けてやり皆で温まる。
イネスの歌声が全てを包みだす。
母なるイネスの元に子供たちが寄り添う。
そしてイネスの優しい歌声が再び俺たちを力付け男へと戻して行く。
意識が上がって行く。
男とは意識の状態をまるで指しているようだ。
女とは愛の状態をまるで指しているようだ。
俺たち男は男であろうと努めてしまう。
でも女性の力無くしては男であれないかのような気がする。
男たちは酒を飲む、タバコを吸う、薬をやる。
全ては意識のため。
そんな気がした。
戦士の気持ちを俺たちは分かち合った。
男女平等と言う名の元壊れ行く本当は系譜しなければならない伝統もあるだろう。
先祖から伝わる智恵と言うものがあるのだ。
そこには莫大な人類の智恵が隠されている。
話し言葉や文字だけでは伝えることの出来ない人間の智恵と能力があるのだ。
人間の脳は80%使われてないという
そのとおりだ。
俺はその少しを知った。
感じることから全ては始まる。
知ることから始まる。
知ることを恐れないで欲しいと思う。
絶やしてはならない智恵がある。
人類の系譜がある。
なんだかそこから全てが始まる気がするんだ。
俺は新しい旅が始まった。
全然それは巷で言われるようなスピリチャルなんかじゃない。
生きて感じて伝えてご飯食べて
人生を謳歌する。
さっ日本へ帰ろう!
そしてまた旅をしよう!
学ぶことはまだまだ沢山ある。
ウアウトラデヒメネスでの
個人的体験でした。
そしてみんな明けましておめでとう2006年1月吉日。
良い風だ。
朝はカフェの2階から、アメリカーノを飲む。
大きなカテドラルが見えるいつもの席。
マスンテで一緒に遊んだユキさんと他愛もない話をしながら。
「いやー今日も良い天気だね」
「空が青いね」
「朝のコーヒーはおいしいね」
他愛もない話だ。
そんなことをしてる内にもう正午過ぎ。
時間は少し早く流れてく。
水道橋の残る石畳の道を歩く。
紫色のブーゲンビリアが出窓を飾っている。
観光客もいない穴場の散歩道。
一番綺麗な場所に一番落ち着きそうなカフェがある。
カフェの兄さんが道に水を撒いている。
話しかける。
「カフェやってますか?」
彼は答える。
「まだなんだよ、6時からなんだ」
俺は聞く。
「この近くにボニートなカフェ知ってますか?」
彼は言う。
「やっぱりウチのカフェかな…」
確かに…。
そして石畳を歩く、丸みを帯びた石が歩いてて気持ちい。
頃合を見て、オアハカ名物チョコラテの美味しそうなカフェに入る。
俺はチョコデアグア。
チョコラテなんてガキの飲むもんだぜ。
ビターなチョコとお湯で混ぜ混ぜ。
コーヒーに勝るとも劣らない。
オアハカではチョコラテには小さいパンが付いてくる。
パンを浸して食べる。
うまい…。
日が落ちてくればまた街の風景も変わる。
コロニアルの町並みを過ぎれば活気に満ちたメルカド周辺の屋台街。
豚から出汁をとった野菜と豆たっぷりのスープ、ポソレ。
唐辛子と酢で作ったサルサを沢山ぶっかけた豚足。
現場のおっさんと一緒にむしゃぶりつく
うまい…。
宿に戻る。
変人大集合。
アメリカナホコ族の若いシャーマン、ドミニカ人アーチスト、
指で絵を描くペインター。
続々と面白い奴がやってくる
っと同時に
ゲストハウスの壁にノースモークマリワナのポスターが日に日に増える。
笑いのネタにしかならないポスターがドミの床で風に吹かれる。
自由の風が吹く。
良い風だ。
ユキさんが50代パッカーから焼いてもらったCD、
その名も高橋セレクションを部屋に流す。
ナカジマミユキ…時代。
「今日はぁーまた、倒れた旅人達も生まれ変わってめぐり合うよー。」
旅人の唄だったのかー。
倒れたこともあった、起き上がったこともあった。
また、倒れるだろう。
また、起き上がるだろう。
「めぐるめぐる時代はめぐる、喜び悲しみ繰り返し…今日はぁーまた…」
ひとつ時代が過ぎて
ひとつ時代が訪れる
旅の終盤。
何も変わらなかったことに感謝を覚える。
相変わらず人見知りする。
相変わらずコーヒーが好き。
相変わらずお金にいい加減。
相も変わらず…
遇いも変わらず
何も変わらず
ヘンテコな人々に囲まれて
さーご飯を食べに行こう。
鼻をかんで捨てちまおう
ブティックの女の子に誘われてサルサを踊りに行った。
サルサは初めて手取り足取り教えてもらう。
自然と一緒に踊れると楽しかった。
テキーラをいっぱい飲んだ。
気づいたらラブレターを書いて渡してた。
そして次の日も会うことになった。
肩を寄せながら色んな話しをした。
幸せだった。
彼氏はいるの?っと聞くと別れたと彼女は言った。
あなたは?っと聞かれ、いないよと。
ふざけて彼女はいるの?と聞いた
彼女はいると言った。
バイセクシャルなの?っと聞くと
そうよっと答えた。
どうすりゃいいもんだか分からなくなった。
俺の女性像の枠に彼女を押し込めたかったようだ?
彼女は彼女で
ありのまま
ただオッパイやらオシリやら笑顔やら
とっても可愛い女の子だった。
そりゃー、仲良くなればムラムラするさ
もっと一緒にいたくなるさ
レズカップルとの3Pを想像した。
やばい!桃源郷が見える。
じゃー今日もブティックに遊びに行くか?
まー行くんだけど…
よしっ!
今日は素直に言おう
何を?
いやーだから、そのーあれだよ。
○×△って
一ヶ月ぶりにテキサス野郎コールがオアハカに帰ってきた。
朝、眠っていると笑って俺の名を呼んでいる。
薄目から覗く奴の顔
おーコールっ!俺は云った。
奴は云った。
ハシシ吸おうぜ!
昨晩はいっぱい飲んだ。
オアハカに帰ってきたら
オアハカで出会った人たちがオアハカに帰ってくる。
みんなここが好きなんだ
俺もここが好き。
サルサバーで詩を書いた。
紙ナプキンに
今朝クシャクシャになってズボンのポッケに埋もれていた。
鼻をかんで捨てちまおう
それからあの娘に会いに行こう
出直しだ!
捨てる神あれば拾う神あり
オアハカ最終日。
あの子に振られた。
なんで?っと聞くと
引込み思案な男は嫌よ。っと
そりゃー酒が美味しくなるわな。
きっつい!女の一言が
いちばんの酒の肴よ。
メスカル5ショット。
つまみは塩、しょっぱい試合だったっぜ。
深夜24時メキシコシティー行きのバスターミナルにご機嫌で行った。
そしてポリスに言われた。
お前はバスに乗っちゃ駄目だ。
なんで?
酔っ払ってるから。
ポリスと言い合いしている間に最終バスは消えていた。
乗車拒否は初めてだった。
初物は何でも嬉しいものだ。
ご機嫌でポリスに絡む。
朝一番のバスにチケットを交換してくれた。
今夜はバスターミナルが俺のドミトリー。
荷物を預け
また飲む。
コーヒーにしたたかシナモンを混ぜて、唐辛子かじって
メスカル飲んで、スパスパ吸って。
元気いっぱい上等気分。
ポリスの女の子がやってきた。
名前はオルガ。
カワイイ。
あなた駄目じゃない!
そんなことを言われる。
だってバスがないんだもん
そんなことを言った。
そしていっしょに2時間後に
仮眠室に連行される。
深夜の添い寝タイム。
捨てる神あれば拾う神あり。
アドレスを交換し
また帰ってくるよと唄う。
朝6時半メキシコシティー行きのバスに乗る。
途中の検問で目の行っちゃてる俺はもちろん連行。
運も尽きたかっと思った。
っがネタが出てこなかった。
あっバスターミナルに忘れてきた。
運も尽くと
運も憑く
ガッツポーズで再びバスに乗る。
火曜日帰国。
ツケは重い。
DONT TRY!
昨日チケットをキャンセルして27日まだ行ったことない万の国に行くことにした。
帰りは寄り道して帰ろう。
すさまじい疲労だ。
昨晩ひょんなことから
ドミで会話が始まった。
イリュージョンを片手に旅に出た
イリュージョンを片手に持つ俺をあざ笑うかのよう
彼女はイリュージョンだった。
少し畏れを感じた。
それ以上でもそれ未満でもない
そのままの言葉だけを話す彼女。
俺の言葉なんてタバコの煙みたいなもの
フィルター通して煙を吸って吐き出た言葉は
換気のない部屋では空気を濁す。
「赤子の気持ち、全てを委ねる?そうすると自然と出会うじゃない…」
「自分以上のものに見せようとしても疲れるだけじゃない…」
「インドのコルカタのカーリーガートで毎日にヤギの首を切るところ見てたの、首を切ったとき地が吹き出て、ヤギはまだ動いていて、その瞬間の生って凄い力で、それが入ってくるの」
「あはは、おかしい…(笑)」
ありのままの人間を目の前にすると
参る。
手を上げるしかない。
初めての降参。
噛み合わない俺のリンガが真夜中のドミからヒッソリと
メキシコシティーの夜に逃げ出す。
男娼地区の屋台でオカマとタコスを食べる。
あぶれた男たちとタバコを吸う。
女も買えなければオカマも買えない男たちと
道沿いで客を待つ男娼を眺める。
車が男娼の前に止まる
サイドガラスが開き男娼が身を乗り出し男と交渉する。
素早く乗り込み
街に消えていく。
高級のシボレーバンや安いベンツ、トラックや商用車、ビートルにニッサン…。
さまざまな車とさまざまな男と男娼が
街に消える。
カツ上げに来るストリートのガキをあしらう。
女だろうが男だろうがよく知らん
ただ夜の街の気色に身を埋没させたくなる。
消灯前のドミで
「明日、ティオティワカン行くんだけど、良かったら一緒にどうですか?」
誘われる。
「あー起きれたら…。行こうかな…。」
曖昧な返事を返す。
自炊をする奴等を尻目に
コーヒーを入れる。
「眠れなくならないの?」
「いや…コーヒー好きだから」
曖昧な返事をする。
明日はルチャに行く、明日はピラミッドに行く、明日はどこへ行く。
目をキラキラさせた連中がキラキラした会話をしている。
遠目から
聞きながらフリーダの絵をまた見たいと思った。
万の国行きのチケットを買った後、そのまま道沿いを歩いた。
なんでか現代美術館にたどり着いた。
昨日、みんなが偽学生書を作っていた。
いろいろ安くなって重宝らしい
ひねくれもんが呟く。
オレ学生じゃねーし…
正規の値段で35ペソ位で入館した。
政治活動も行なっていたイケイロス?だろうか名前を忘れた。
革命家トロイツキーを襲った活動家だ。
そいつの絵に興奮した。
煽りまくってんなーっ。
ロシアアバンギャルドの扇動的なポスター以来の興奮だった。
その昔、看板屋でグラフィックを少し弄っていた。
サインディスプレイ、勉強がてら政治的なポスターなどをトレースしていた。
ニューヨークMIFだろうか?
ニューヨークファッション工科大学に進むという友達と飲んだ。
オレは云った。
「山本五十六艦長のポスターT-シャツってニューヨークで売れるんじゃない…?」
彼は首を傾げた。
その数月後ニューヨークに飛行機が突っ込んだ。
それ見ろ!
思ったもんだ。
オレはフリーダの絵を前にした。
自分の痛みを、そんな目でフリーダは見てるんだ…。
ふーん。
参考文献室に入った。
何が見たいかっと聞かれた。
「フリーダ…」
気の利いた図書館員のオバちゃんが美術書をいっぱい持ってきた。
一つの絵に釘付けになった。
フリーダの体に短い釘が沢山刺さっている。
そしてフリーダは涙を流しながら、自分をガン見している。
その絵を見てたら、チョビット涙が零れた。
よくわかんねーよ。
美術館を出た。
よくわかんねー、いや知ってる。
一日タバコを30本くらい吸っている。
オアハカでチョット有名らしい絵描きと深夜飯を食いに行った。
奴は云った。
「食事中なぜタバコ吸うんだ?おまえはどういう頭してるんだ?クレイジー?だろ」
オレは睨んだ。
「あっ…!」
隣の客が席を立ち、ほかの席へと移動した。
俺たちはシタタカ吸っていた。
俺たちは普通を装い始めた。
「これっナオキおいしいだろ!」
「あっうまいねー」
「もう一個食べるか?」
「おなかいっぱいだよ」
そして食事中、オレはまたタバコに火をつけた。
奴はもう何も云わなかった。
観光に興味がねー。
ピラミッド行きたいかと思ってたら
メキシコにいるとそんなこと全然思わなねー。
むしろ、めんどくさい。
そして真夜中勃起する。
あーめんどくせー。
穴のない世界で
穴を買ってみる。
そんな奴になりたくなかったからか?
キラキラした旅行者から隠れる。
そしてそいつらを見て思う。
こいつら勃起しねーのか?
深夜シャワーを浴びながら扱いたところで
世界はかわらねー。
フラストレーションを抱える。
旅行者の前で押し殺す。
「赤子の気持ち、全てを委ねる、」
「自分以上に見せようとしても疲れるだけじゃない」
どうやら少し不貞腐れている位が
お気に召すようだ。
長年慣れ親しんだ習性。
腹のそこから変えようなんて思えねー。
噛み合わないチンコっすかラントウさん。
良いこと云うなー。
ディコンストラクション、脱建築。
なんか云ってたなー昨日。
バタイユの「呪われた文明?文化?」
誰か教えてくれ。
まーまーそれが人間様よ。
今日は酷くお疲れだぜ。
ファック!
16の時、深夜
睡眠薬飲んで
新車置き場に忍び込んで
ランドクルザーの皮のシートで眠った。
車が燃えて
捕まった。
そこの会社の管理人がオレに怒鳴った。
「テメー見たいな奴を外道っていうんだよっ!」
「この腐れ外道がっ!」
オレは云った。
「ヤレヨ…」
そんで縛られて連行された。
あのころも勃起しては無い穴探してた。
あんま今もかわんねーな。
なんじゃこりゃ!
ホント毎日にコロコロ転がって楽しいや。
出発までシティーで不貞寝もオレらしいや。
DONT TRY!
ブコウスキーの墓標だぜ
忘れちゃいけねー。
続ウアウトラ デ ヒメネス
26日早朝5時メキシコシティー再び到着。
チケットを代理店に取りに行き、所用を済ませた後
睡眠を貪る。
夢を見る。
友達と会った夢だ。
俺が何かを話すと友達は泣き出した。
とても泣くとは思えない友達が涙を流しながら
俺に何を言った。
どうやら、何かを間違った俺に泣いてるようだ。
友達を悲しませたことが
凄い悲しかった。
最後に「そんな話聞きたくねーよ」
っと云われた。
夢の中で俺は友達に何を話したんだろう?
きっと人に話すような話じゃなかったんだろう。
あいつの涙は何だったんだろう?
その後も幾つか印象的な夢を見た。
傷つけたであろう人々が俺を追ってる夢だ。
夢の中の俺はどれもこれも
どうしょもなかった。
まるで何か変わったと思い込んでいる俺に
何も変わってねーよっと
教えてくれてようだった。
夢の心理学は分からない。
世界は全くベールに包まれていて
俺は世界を信じたいように信じていて
時折その乖離を知らしめる。
ある日、その日まで生きてきたことを受け入れた。
それすりゃも勝手な解釈で
世界の真実はまた別の世界のようだ。
繰り返すことすりゃも受け入れたつもりだ。
また、同じように間違えるであろうことを
夢が暗示したのか?
肝に銘じろってことだろう。
1月23日再びウアウトラデヒメネスへ出発した。
ヒョンな事からYさん、H君、俺の3人でウアウトラへ向かった。
メキシコシティーに来てから夜寝れない日が続いてた。
なんだかこの町と離れたかったし
また、忘れかけてたことを思い出したかったのだろうか?
土曜日、T君がメキシコシティーから日本に発つ夜、メスカルを飲みながら旅を語った。
朝4時半にゲストハウスを出るT君とYさんんと一緒に飲んだ。
俺はウアウトラでのことをみんなに話した。
酒を飲んでご機嫌でおしゃべりな俺が感じたこと経験したことを話している。
何かを伝えたっかたんだろう。
Yさんが「私も行ってみたいなー」っと云った。
俺は調子付いて酒のいきおいもあったのだろうか
「じゃー一緒に行ってみる?」
っと云った。
まっ、なるようになるさっ
そんなことを思った。
そいてT君を朝見送った。
その後Yさんと一緒に風呂屋に行き
湯船に浸かりながら話した。
何か話さなきゃいけないことは本当はあって
それなのにまだ俺はそれを話していない
そんな気がしてならなかった。
何ヶ月ぶりかの湯船に浸かり
外に出るともう10時を回っていた。
それは日曜日で商店街のシャッターが閉まり
街路樹から零れる日差しが綺麗だった。
後日、月曜日朝ウアウトラに出発することが決まった。
宿に帰りキッチンでコーヒーを入れてるとH君が話しかけてきた。
「明日オアハカ行くんですか?良かったら一緒に行きませんか?」
H君は前にもティオティワカンに行くのを誘ってくれた。
その時は朝起こしてくれたのに
「あーごめん、眠い…」っと
俺は再びベットに潜っていた。
連れない返事をする理由が見つからなかった。
かといってあんまりまだお互いのことを話したことないH君に
オアハカを経由してウワウトラに行くことを伝えるのも気分じゃなかった。
まーどうせっオアハカを通るんだ、そう思い。
「いいよっ、朝出るんだけど良い?じゃー朝飯食べてからね…」
そんな返事を返した。何かを話さなきゃ…。
徹夜明けの疲労からか頭が回らなく何かが億劫だ。
一緒に行くYさんにオアハカまでY君も一緒に行くムネを伝える。
昼間の何時だろうか?
浅い浅い眠りに付いた。
深夜起き出して、いつも夜中食べていたタコス屋へ出向く。
チキンスープのレバー入り、タコス5個、イチゴミルク500ml。
宿のドアをソウッと開けて皆を起こさないようにベットに潜り込む。安物のウールの毛布が肌に硬い。
朝7時ころ目覚ましで起きる。
宿の食堂でコーヒーとパンを取る。
なかなか起きて来ないH君を起こしに行く。
H君21歳飛び上がって起きる。
元気だ。
荷物を宿に預け、3人でタクシーに乗りバスターミナルへ向かった。
チケットを買う10時30分出発予定、まだ1時間弱時間があった。
俺はYさんがトイレに立った時、H君にYさんと俺はオアハカを経由してオアハカには泊まらず
その日にウアウトラに出発するつもりのムネを伝える。
「ウアウトラって何ですか?」
素朴な疑問だ。
H君の問いに出来るだけ慎重に言葉を選びながらウアウトラでの話をする。
「あー凄いっすね…」
俺は「ウン…」
と答える。
H君が言葉を待っているように感じた。
「まー自分の判断だけど、一緒に行く?」
H君は云った。
「まー流れっすかね…」
その後、H君の質問に出来るだけ答える。
何かを話さなきゃいけない…けど言葉が出てこない。
「どこでネタ買えるんですか?」
曖昧だけど俺はちゃんと教えてしまう。
頭の中に…を持ったまま
オアハカ行きのバスに乗り込んだ。
バスの振動に揺られ眠りに誘われる。
フト目を開ければ、アキラの「神の肉テオナナカトル」
を手にしながらウトウトするYさんが隣に座っている。
どこのページを開いているんだろう?
Yさんの開くページを少し覗き、俺はまた眠りに付いた。
俺最初、独りでウワウトラへ行った。
今再びウアウトラへ向かい、人を連れて行こうとしている。
俺はアキラの本を何度も読み返し、自分の判断で向かった。
彼らは曖昧なまま旅の流れに乗ってウアウトラへ向かっている。
そしてまた俺も、ホントに良いんだろうか?
相変わらずスペイン語も全然だ…
H君はメキシコに来てまだ一週間たらず、イネスとアポも取っていない、俺も飛行機までの時間がない、
ウアウトラとシティーの往復の時間を入れれば26日までシティーに到着するとするとなると24日だけだ。
それに俺自身にもどこかで迷いがあった。
イネスにアポを取らなかったのは、曖昧な気持ちを持っていたし、
もし会えなかったら会えなかったらで俺は何かの責任から開放されて楽だからだ。
イネスがオアハカに仕事に行っていたら、それはそれで安堵だなっ、そう思った。
旅の流れに身を委ね、今は眠ろう。
オアハカに着くまで。
午後3時か4時頃
何度目のオアハカバスターミナル到着だろう?
5度目位か…色んな町や村に行っては再びオアハカに帰って来た。
Yさんとも出会ったのはオアハカで別れて再び出会ったのもオアハカだった。
久しぶりのオアハカは雲行きが悪かった。
雨が降れば森の恵みキノコが生える。
この様子だと山間部のウアウトラは雨に包まれているだろう。
ウアウトラ行きの最終乗り合いバンは夜8時…。
Yさんと良く通ったメキシコにしては珍しいベジタリアンメニューのあるレストランと
カテドラル前のカフェに皆で行った。
レストランではH君も喜んでくれた。
「これで35ペソなら安いですね!」
俺は云う
「ここ位だよっ、ホントまともに野菜食べれるのは」
Yさんはこのレストランに俺がオアハカを発った後も良く通ってたらしい…。
シティーで再びYさんに出会った時、
「デザートもつくようになったんだよ!」
嬉しそうに話してた。
明日は儀式を受ける予定の俺たち。
しっかり食べれるレストランはありがたい。
儀式前最後の晩餐を終える。
7時も回った。
ウアウトラ行きのバン乗り場まで歩く。
「オアハカで出会った人たちにまた会えないかな…」
そんな話をYさんとしていた。
歩いているとやはり出会った。
俺にサルサをリードしてくれた女の子だ。
彼女の肩にはマッシュルームの墨が彫られている。
歩いていると彼女の墨が目に入った。
なるようになるかな?
そんなことを思い出会いと別れの抱擁をする。
夜8時乗り合いバン出発…。
懐かしい道を走る。
霧の中慎重にバンは山道を巡る。
深夜2時頃俺たちはウアウトラへ到着した。
冷たい雨と雲が街を包んでいた。
前回と一緒の5月1日ホテルに宿を取る。
交代で暑いシャワーを浴びる。
後はゆっくり休むだけ。
心の中の心配は尽きない…。
2つだけのベッドを3人で分け合う。
男の子のH君と俺で一緒のベッドに寝る。
H君に布団を取られて寒い夜を過ごす。
24日。
メルカドとホテルの前の道を葬式の行列が進む。
いつもは陽気な楽団も雨のためか
布で楽器を包んでいる。
静かな行列だ。
レストランでチョコラテを飲んだ後
イネスの家へ向かう。
尋ねるとイネスは不在だった。
「ママは午後2時頃帰ってる」
年頃の娘が教えてくれた。
まだ暫く時間はある。
Yさんがバスの時刻を見に行こう、と云った。
チケット売り場を探し
Yさんと俺は25日夜9時メキシコシティー行きのチケットを買う。
H君は25日昼1時30分オアハカ行きの乗り合いバンのチケットを買う。
俺たちは再び歩き出した。
さっきの葬式の行列が再び現れた。
俺はフト呟いた。
「あっイネスいるんじゃねー?」
葬式行列の後部に目をやりながら歩く。
「オラッイネス!」
同時に目が遇ったような気がした。
俺の名前はどうやらもう忘れてるらしい…。
俺もまたイネスの元を訪ねた一介の旅人に過ぎない。
30分後位にイネスの家に行くことになった。
流れ流れ…。
何処へ向かう流れか…。
Hくんがホットドック屋を指差し云う
「チョー喰いてー!」
俺はマッシュルームの体における変化を話す。
H君が云う
「あのーキノコ見たいんですけど…。どこかで見れないんですか?」
俺は云う。
「あそこ角を曲がって暫く歩いたら右手にキノコの絵が描いてあるトタンの家があって
オバちゃんが一杯持ってるよ…」
H君が云う。
「見に行きませんか?」
俺は云う。
「駄目だよ。いやっ俺は見たくないね、
サンホセデルパシフィコでなら良いけどウアウトラじゃ見たくないんだ…見るなら独りで行って…」
伝えたいことを伝えられてないもどかしさが募る。
H君は云った。
「あー、じゃーいいっす。」
儀式終了後の軽い食事を用意するため
バナナとリンゴとパンを買った。
待ち合わせの時間も近くなりイネスの家に向かった。
イネスと握手を交わし再び自己紹介をみんなでする。
儀式を受けたいムネを伝える。
了解を得て、夜6時再びイネスの家へ向かうことになった。
ホテルに戻る。
H君に云う。
「これ読んどいてよ、このオアハカあたりから…」
俺はアキラの「神の肉テオナナカトル」を渡した。
H君が云う。
「うわーこれ面白いっすねー、これ読んでからティオティワカンとか行ったらもっと良かったのになー」
待ち合わせまで後2時間位。
俺が読んで欲しかった部分は最後の後半だ、
H君の読んでいるティオティワカンの部分は一番最初の方だった。
読んで欲しい肝心の部分はまだまだ先。
儀式まで後2時間そこまでに彼は俺が読んで欲しい部分までたどり着けるのだろうか?
俺は、アキラの書いたマッシュルームの儀式の部分を読んでH君に最終的に判断して欲しかった。
皆が旅先に持ってきたCDをかけながら時を待つ。
H君はゆっくり読んでいる。
夕方5時半イネスの家へ向かう準備をする。
部屋を出る前にベッドの上に伏せてあるアキラの本のページを確認する。
俺は呟いた。
「まずいな…」
アキラの本を覗くと調度アキラが旅で会った仲間3人でウアウトラを目指す、と云う場面だった。
胸の中に不安が疼く。
21歳メキシコ一人旅…そして一週間目。
俺だって語学は全くだし、決して旅慣れてなんかいない。
H君同様勢いで進んできたようなものだ。
Yさんも1年南米を旅しているがそこまでスペイン語に慣れている訳じゃない。
少なくても何か共通の認識を抱いていたかった。
俺はイネスのところでの2度儀式に参加した。
一度目の感動とは裏腹に2度目は俺がイネスとの約束を破ったため、辛い思いをした。
胃を空にしとかなければならないのに、
俺は儀式の前に空腹に負けたのと少し小慣れた気持ちでいたからかタコスを食べてしまった。
儀式でマッシュルームを食べた後、意識の変化が悪かった。
胃にタコスが残っていたからだろうか?入っては戻り入っては戻り…
イネスとのタイミングも何だか合わない。
イネスの賛美歌も空しく響く。
約束を破った罪悪感からか…正直にタコスを食べてしまったことを言い出せない。
「もう大丈夫だよイネス…寝て良いよ」
っと云った。
そして独りで精神力勝負のキツイ体験をした。
そんな経験から決してイネスだって全てが見える万能の神ではない、
普通のオカーさんであり女性なのだ。
彼女はマサテクの伝統を体験から通じて一つ一つ学んで行った伝統医療技術者みたいなものだ。
決してシャーマンっと呼ばれるからと言って万能な訳ではない。患者が嘘ついたら、正しい医療を行えないのは西洋医学も同じだろう。
俺たち3人の共通認識と云えば、好奇心、なるようになるさっ、何かを体験してみたいっ。
そんな旅人誰もに通じるようなことだけだった。
2人を連れてきた責任感のようなものが伸し掛かる。
ホントに危険な魂に触れてしまう儀式だ。
もしものことが合ったら命がけでその人を守らなければならない。
自分の判断、彼らの判断、人は人…。
同じ旅人としての個々への無責任さ
人としての責任
彼らへの接し方に戸惑う。
儀式は孤独な戦いであり、それをクリアーした後の儀式だ。
ホテルから俺たちは雨の降りしきる街に出た。
先頭を歩きながらすでに儀式は始まってるように感じた。
夕方6時到着。
冷え切ったコンクリート剥き出しの一階の儀式用の部屋。
断熱のない床が体を芯から冷えさす。
イネスがホテルからブランケットを借りて来いと言う。
皆、別に大丈夫だと言う。
俺は云う。
「いやっホントこれからもっと冷え込んでチョー寒いんだ、ホテル行って俺ブランケット取って来るよ…」
3人で一度ホテルに戻りベットの毛布を剥ぎ取る。
ベットは2つ、一枚足りねーなー。
そんなことを思う。
そしてイネスの家へまた歩く。
7時頃儀式開始。
イネスが前回と同じように祭壇の前で唱え始める。
一人一人の名前を忘れないようにイネスは再び名前を聞き返し
慎重に名前のメモを取りそれを祭壇に置く。
渡された琥珀を一人一人握り締める。
それを再びイネスに渡す。
燃える墨の中へ琥珀を置く。
火が灯り白い煙が部屋を包む。
ミントのような爽やかな香りがあたりを囲む。
3枚のバナナの葉に今まで見たこともないほど大きなキノコが並べられる。
採りたてであろう瑞瑞しい。
独り独りに手渡され皆緊張している。
「食べるとどうなるの…?」
H君の素朴な疑問に上手に答えて上げられない。
H君自身も心配している。
どうなっちゃうんだろう、俺大丈夫かな…。
そんな気配を受け取る。
イネスに指示される、
H君は3つ、Yさんは4つ、俺は特に指示なし。
皆ゆっくり食べ始める。
美味しく無いだぁー醤油が欲しいだ…。
「どのくらいで入るんですか…?」
H君が俺に聞く。
「30分1時間…人によって違うけどその位が目安じゃないかな…。
最初見てるものに変化が現れるから自然と分かると思うよ。」
H君の心の不安を取って上げることは俺には出来ない。
本人の意思が一番重要な儀式だと思うのだが
迷い、不安、情報の欠如、最初の好奇心が薄れていく。
「自分に素直にね…キツイ時はキツイ、入ったら入った、ちゃんと伝えないと上手くいかないから…」
H君に話す。
「あっはい…」
返事が心もとなく感じる。
暫くしてYさんが
「あたし来たみたい…」
っと云う。
続いてH君も
「なんだこれー?」
と呟きだす。
俺も入りつつあったが集中出来ない。
俺たちが入ったことをイネスが確認する。
白い粉を体に数箇所にすり込んで行く。
「ふーっ」
若干の安心感に包まれる。
それぞれの世界へ入って行く。
イネスが歌を歌う。
H君が寒がり出す。
「スゲー寒いんですけど…」
毛布を集め体に掛けてあげる。
だいぶ冷え込んできた。
外からデカイ音で戦争映画のようなものが流れている。
「うわーなんだよこれーっ、頭やられんなー!」
H君が云う。
耳に障る。
俺は思う。まずいなーっ。
イネスも俺たちの様子を見て、その音にまずいなーっと云う顔をする。
イネスは俺に語りかける。
大丈夫…?イネスも心配そうだ。
俺は皆に呼びかける。
「寒いね…温まろうぜ!」
3人で壁にもたれ掛か毛布にくるまりくっ付き合う。
確かに頭がやられそうになる程の戦争映画の爆音が響く…
爆弾の音、機関銃の音、悲鳴。
いくら映画とはいえ、こっちはマッシュルームを食べて
凄い敏感になっている。
悲鳴は悲鳴にしか聞こえない…。
2人の真ん中に入り3人で体育座りをして二人の膝を強く抱く。
我慢の時、苦しい、イネスの賛美歌に集中しようとするが
恐怖に近い感情に襲われる。
「何なんだよこれー…。」
H君が呟く。
H君にもっと毛布を掛け抱きしめる。
俺は云う。
「あー大丈夫だよ、大丈夫…」
H君が呟く…。
「何でそんなに優しいんですか…」
H君の綺麗な目から涙が零れてる。
上手くは答えられない。
俺が寒がってるときにイネスがしてくれたように俺は
マネしてるだけだった。
絶対独りにしちゃいけない…魂を彷徨わせちゃいけない。
イネスが何か呟きながらH君の体を摩る。
俺は上着のセーターを脱いでTシャツ一枚だった。
H君が云う。
「震えているじゃないっすか…。ホントは寒いんでしょ…」
俺は答えられない。
イネスや僕らの間に緊張が走る。
俺は上着の暖かさが嫌だった。
自分の熱を上げたかった…。
そんな俺の様子すりゃH君を不安にさせているようだった。
相変わらず外から戦争映画の爆音がや悲鳴が鳴り響く。
マジでマズイっ…。
手を付くしかない、流されないようにひたすら意識を保つ。
どうしよう?どうしよう?
イネス大丈夫なのか?このままで…俺は思った。
いいタイミングで部屋にミゲルが遊びに来た。
クンフーのモノマネをしながら…。
部屋に安堵の空気が立ち込める。
俺はミゲルに飛び掛りプロレスゴッコを始める。
俺は日本語でミゲルに云う。
「おまえマジうるせーんだよ!あの音どうにかなんねーのかよ!こっちはキノコ食ってんだよ!
頭ヤラレルんだろーっ!」
っと云いながら俺は脇固めや足の四の字固めを繰り出す。
ミゲルは楽しそうに俺にパンチやキックを入れてくる。
マジで救われた…。
イネスも笑っている皆も笑っている。
「ふっー!」
本物のため息をつく。
戦争映画の音は鳴り止んだ。
意識が集中と拡散を繰り返す。
その度にイネスが唄を歌う。
幾度となく体にまるで結界を張るように粉を刷り込む。
息切れ、もう一越え。
睡眠不足と不摂生からかキツイ…。
H君から声が漏れる…。
「あっー!何なんだよっ、これよーっ」
イネスも真剣だ。
床に寝ろっとイネスも云うがH君の耳に届かない…
イネスは自分で寝る姿勢を取ったりジェスチャーを使ってH君に訴えてる。
H君は笑う…
「何やってんだよー…」
俺はH君を呼ぶ。
「おいっ!いいから寝ろよっ横になるんだよっ」
イネスと一緒に肩を抱き寝かしつける。
イネスが寝かしつけ唱えながら毛布を掛け体を摩る。
H君は
「くすっぐてーっよ!くすぐってー」
大きな声を出す。
「いいから大人しくしてろよっ!」
段々俺もイライラしてきた。
下の名前を呼び捨てで呼ぶ。
「おいっ!ちゃんと自分もてよ」
イネスに大丈夫だよっと云う。
イネスが外に出てくと娘を連れてきた。
毛布に包まる俺たちを
部屋の隅の椅子に座りながら見ている。
いやっ顔を横に背けている。
見てられないのだろうか…。
イネスが娘を呼んでH君の隣に座らす。
H君の手を握らせる。
そして二人で歌い始めた。
H君は安心し始め呼吸も穏やかになっていく。
暫くして手を握りながら
娘はH君に笑い掛けた。
「15ペソ…よ。」
落ち着いたH君は暫く横になっている。
そして突然起き上がり靴を履き始めた。
しっかり呼びかける。
「Hっ、ドコ行くんだっ?」
H君は吐き捨てる。
「分けわかんねーよっ!」
俺は云う。
「まー座んなよ…」
H君は毛布の上へへ垂れ込んだ。
バナナの葉の残りのキノコが辺りに散らばる。
Yさんが黙ってそれを片つける。
「H君…靴ながなきゃ…」
俺は笑いかけて靴を脱がす。
イネスと彼の肩を抱きながら背中を摩り続ける。
俺はH君の背中を摩っていると何故だか涙が溢れてきた。
こんなにも彷徨ってるんだ…。
大変だよな…。
生きるって命がけだよな…そんな事を思った。
落ち着いてきたH君と少し話す。
「見ろよ俺…全部分かるだろ、H君…」
H君は云った。
「はいっ全部分かります。」
俺はH君の腕を握る、
「これが俺の力なんだよ…」
俺は何かを伝えようとした。
H君が云った。
「はいっ分かります。」
俺は云った。
「お前も分かるだろ…自分の…」
H君は云った。
「はい…」
俺は云う
「じゃっマジで兄弟なるか?」
俺は手を差し出した。
硬い握手交わす。
「H-!」
っと云いながら顔を摩り肩をゆするっと
ウザそうに
「わかったっよ!」
っとH君が云った。
そしてYさんが云った。
「H君…よく独りでここまで来たよね…」
H君の目から涙が溢れた。
マリアのような優しさの一言だった。
俺も感極まり涙が零れた…。
イネスからも安堵の表情が溢れる。
肩の力が抜けた俺はイネスにもたれ掛かり肩を抱く。
イネスが
「ナオキー…」
っと優しく呼びかけてくれる。
「はーイネス…グラシアス…」
イネスが俺の背中を摩ってくれる。
全身の力が抜けた俺は
椅子に座った。
「ティエネ…シガロ?」
蝋燭だけの部屋でみんながタバコを探してくれた。
椅子にもたれ掛かりタバコに火を付け
一服する。
H君が俺に言う。
「直さんっ小さいっすねー!」
改めて云うんじゃねーと思う。
低学歴、低身長、低収入、3T。
「疲れてる時いうんじゃねーよ」
俺は思わず笑う。
H君が俺に聞く。
「これからどうなって行くんですか?」
俺は答える。
「だんだん下がってくからゆっくりね…最後まで自分でだよ…」
イネスが優しく唄う。
H君は寝息を立て始めた。
Yさんが云う。
「H君凄い暖かくて離れられないんだけど…どうする?」
俺は云う。
「じゃー今日はここで寝ようよ、イネスもそう云うし…」
寝静まった二人を見てイネスに伝える。
「イネス…眠くないの?」
「ナオキは?」
「大丈夫そこで今日寝るよ」
「分かったわ…」
「ブエノスノーチェス…」
「ブエノスノーチェス…」
入り口から出るときイネスが云う。
「バイバイ…」
俺も
「バイバイ」
と云って手を振った。
寝静まった二人を見て俺はパンを持って屋上へ行く。
お腹がペコペコで寝れなかった。
ウアウトラの雨に打たれながらパンを貪る
「ウメっー!」
儀式の途中トイレに行くとき
イネスの娘が手を握って連れってくれた。
可愛かったなー。
俺は眠りについた。
後日25日ホテルに戻る。
1時半オアハカに出発するH君を見送る…いろいろ話した。
「あれっ夢なんすかねー?」
俺は云う
「夢見たいだけど夢じゃねーよな」
H君は云う。
「ドラッグって良くないですね…」
俺は云う。
「ホドホドでしょ。」
H君は云う。
「葉っぱも吸いすぎると言葉がおかしくなるすよっ」
俺は云う。
「ホドホドだよな…。」
お互い何度もお別れを唄う。
手を振り分かれた。
イネスの家に戻るとイネスがアキラにメールを送りたいか
手伝ってっと云われ一緒にネット屋に行った。
俺のメールアドレスからだ。
内容は良く分からなかったがどうやら
アキラさんに祭壇をもっと良くしたいから…ちょっと寄付してして欲しいっと云うような内容だったっと思う。
ナカナカ調子の良いカーさんだ。
ちゃっかりしってる。
やはりアキラさんから返事は俺の元に返ってきていない。
イネスっ!
俺が思うにその辺日本人はシビアなんだよ。
俺も同じくだ!
イネスにチョコラテを入れてもらう。
雨に打たれ冷えた体に染み入る。
イネスの娘に笑顔で
「ミ.ノビオ」と何度か呼ばれた。
照れて笑って誤魔化していたら
帰りの握手の時、手を握り返してくれなかったし…。
何だか冷たかった…
えっもしかしてマジで?
いやここはメキシコ、たんなる誉め言葉だろう。
やはり俺も男らしく
「ミ.ノビア」っと云うべきだったか
時すでに遅し。
雨のメキシコシティーのネット屋からフト思う。
イネスの娘可愛いんだよなー
またいつか遊びに行こう。
娘に会いに!
明日27日バンコクに発つ
GNJにメールするのを忘れていた。
会えるだろうか?
ちょっと気になる!
シャンティタウン…ありがとう
放浪も良し パックツアーも良し
バックパックも良し スーツケースも良し 手ぶらでも良し
遠い国も良し 近くの町でも良し
山も良し 海も良し 温泉も良し
目的のある旅も良し 旅そのものが目的でも良し
ひとりも良し 連れもよし 現地人も良し
どんなスタイルでも、どこに行っても何を持って行っても
とにかく、旅は良しよし、旅に出よう
シャンティタウンから転載
http://www.shantihtown.com/
2006年1月29日
バンコク到着!
ウアウトラのイネスから買い占めた刺繍の服のせいで
メキシコシティー、ロサンゼルス、バンコクとトラブル
続きだった。
俺は刺繍の服を元々卵が入っていたダンボールに入れていた。
しかも可愛い卵の絵が印刷されていた。
考えれば分かることなのだが、検疫が卵の入っていたダンボールなど許さない!
係員と一悶着の後、1ドルで気の良い奴を買収
換えのダンボールを持ってこさせる。
どうにかシティーはクリアーした。
乗り換えでロサンゼルス。
俺は空港内に怪しい汚いダンボールと土嚢袋を積み上げた。
その横で床に怪しい民族系ブランケットを敷き爆睡…
どうやら空港ポリスに目を付けられていたようだ。
荷物を置きっぱなしで外にタバコを吸いに行った。
3服したところで逮捕ならぬ尋問…。
決して荷物から離れないことを約束させられる。
腹が減ったがサンドイッチが8ドルという気の狂った世界に
驚愕する。
タイ航空に乗る。
スッチーの英語に自信満々でなぜかスペイン語で答える俺。
スッチーの日本語にもなぜかスペイン語で答えていた。
今タイの屋台のオバちゃんにもスペイン語で語りかけている。
やはり語学不向きだ。
バンコクに到着した。
スゲー眠いのに荷物が一つ出てこなかった。
サービスカウンターに行く。
英語で質問されているのに何故かスペイン語で答える。
分かってくれない係員に人差し指を立てて切れる。
見るに見かねたメキシコ人がやってくる。
タイ人が日本人に英語で質問し、日本人がそれをスペイン語で答える、それを聞いたメキシコ人が英語でタイ人に翻訳する。
俺の頭が悪いばかりに大掛かりだ。
一応紛失書類を貰い空港から出る。
ところでここは何処だ? バンコク!
有名だが俺はここに来たのが初めてなことに気がついた。
カオサン?
まずいなー!ツーリストインフォメーションに行き地図を貰う、タクシーにボラレながらカオサンっという場所に着いた。
フラフラ歩いているとスウィティーというゲストハウスを発見した。
確かラントウさんの常宿でナンディーとも縁の深い宿だ。
チェックインする。
牢獄のようなシングルでアジアを感じる。
ネット屋でGNJの居場所を確認。
なんと隣の宿だった。
突入する。
いたっ!
よかった安堵する。
話を聞くと今日バンコクでの買い付けを済ませ6時のバスでチェンマイに移動するとのことだった。
おーギリギリだった。
実は今回のバンコクインには。
密かなミッションを持っていた。
ウアウトラでイネスから買い占めた服を俺は日本のみんなに届けたかった。
そこでGNJの力を借りたかったのだ。
ウアウトラのマサテク族によって作られる服は、
それは本当に愛のこもった優しい優しい服なのだ。
女性は時代によって自然と体型が変化していく。
少女時代、青春時代、妊婦時代、子育て時代…
しかし今の西洋型の服はタイトでセクシーだが女性の自然な体の変化に規制をもたらす。
出産したら本当はご飯を食べてお乳を出して子供と共に女性は成長していく。
しかし今はそこでダイエットしたり食事制限をして子育てと体型維持の過度な負担を強いられているように思える。
まっ僕は男の子、分からない部分も多いがそのように感じる。
しかしマサテクの女性の服は女性の全ての自然な変化に適応している。
俺はイネスというマサテク族の女性に質問した。
なんでウエストの部分がタイトじゃないの…?
イネスは云った。
「だって女性は妊娠したらお腹が大きくなるでしょ」
何で脇のところが開いてるの?
イネスは答えた。
「オカーさんになったら太くなるじゃない」
イネスを見て余計な質問をしてしまったなっと思った(笑)
イネスは云った。
「一生きてられるのよ」
俺はその時なんだか感動に包まれた。
日本の昔の服もそうだよなー、作務衣とかだって凄い体に対して柔軟に出来てるもんなー。
やっぱり、そういうのって先人が作ってきた智恵なんだよなっ。
メキシコのウアウトラで学んだ。
ホテルのカウンターをやっている女の子に話しかける。
「その服可愛いね!どこで買ったの?いくら?」
女の子は答える。
「これ、オカーさんが作ってくれたの」
ほんとに嬉しそうに答える。
あーここの文化ではきっと母から娘に、母から娘にそうやって伝えられて行ってるんだなーっと思った。
僕にとって旅先のそういう学びは、ホントに心を潤す。
僕にとってウアウトラでのカーさんはイネスであった。
イネスの作った刺繍の服。
それは嘘偽りなく愛情の賜物だ。
一つ一つ様々な自然の美しい花や鳥を針で縫っていく。
気の遠くなるような作業だ。
この機械全盛の時代にあって、イネスもミシンを持っているのに刺繍だけは一つ一つ手で縫っていく。
僕は、静かに座って針を通していくイネスの姿に感じたものがあった。
あー自分の母にこれを上げたいなー、
あー昔の彼女にあげたいなー、
あーお世話になった人に送りたいなー。
出来たなら、この服から優しさを感じられる人に届けたいなー。
そんなことを思った。
そしてイネスから母にプレゼントしたいから買いたいっと伝えた。
イネスの作った服はどれもこれも同じように優しかった。
とてもじゃないけど、どれか一つ。
僕には選べなかった。
やってしまったヤクザ買い!
「イネスっ!これ全部頂戴っ!」
そして俺は大量の服やらクロスを卵の絵柄のダンボールに詰め込んだ。
そしてご満悦でホテルに帰った。
しばらくして不図思った。
大人の俺が…。
「おいっナオキ!これどうすんだ?責任持ってちゃんとしろよ」
僕は途方に暮れた。
「えーっだってー欲しかったんだもん!」
そして俺は主宰GNJ
旅する雑貨屋シャンティータウンのホームページをめくった。
なんか書いてあるぞ!
旅の風をお届けします。
世界中の旅人を巻き込んで。
良いこと云うなー!
っと同時に直感…。
やっぱりGNJに会わなきゃな…。
俺はバンコクにGNJがいるという情報を手にして
一路バンコクを目指した。
でっかいプレゼントとバックパックを持って…。
そしてGNJに会えた。
どうやってことの顛末を説明していいのか、
どうすればいいのか全然わからなかった。
話したいことは他にも沢山あった。
ただ、GNJに見て欲しかった。
それだけで別に良かった。
調子に乗って俺はGNJに言った。
「これ、お願いします!」
GNJはデカかった。
「いいよナオキ」
ありがたい言葉だった。
安堵が広がる。
よかったバンコクに来て…。
ミッションが一つ前に進んだ。
忍びのものも助けてくれた…。
メキシコ。
聖地ウアウトラ…から 日本に届け
俺の愛! イネスの愛! マサテクの愛!
そしてシャンティータウンの風!
って俺はただ買ってきただけなんだけどね…。
そのうちサイトに上がると思います。
世界中の色んな風が
「旅する雑貨屋シャンティタウン」には吹いてます。
ゼヒ一度ご覧あれです!
旅がしたいだけで始めた雑貨屋が
世界中の旅人とアーティストを巻き込みながら
世界中を旅しながら買付けした商品を
現地の風とともにお届けします。
http://www.shantihtown.com/
みなさんよろしく!
あとがき
深夜1時を回った2等バスの中
バスドライバーに聞かれた
「日本の歌は持ってるか?」
バスの中ではみんな寝ていた。
遥か遠方で2千万人都市メキシコシティーが
オレンジ色の一つの塊となって光っていた。
僕は日本の歌をそんな持ってなかった。
いつ貰ったCDだろうか?
GNJがオレに作ってくれたCD
「脱糞上等!大輪直樹応援ソング」
これしかないっ!
ドライバーに渡した。
後部座席に座っていたユキさんと俺の元にも
そのサウンドは響いた。
俺たちは語った。
「真夜中の、滅多なことじゃ日本人が乗らないこの路線でこんな歌流してもらえるなんてミラクルだよな!」
前方のドライバー達が日本の歌を聴いて
笑ったり喜んだりしている。
頭の痛くなるなるような曲はどうやら飛ばして聴いている。
ハナレグミのドレミレゲエなんて
みんなノリノリだった。
素敵な深夜の旅だった。
メキシコから日本へ
日本からメキシコへ
どこかで何かは確かに繋がっているんだ
今もあの日もこの日も夢も何も
全ては事実なんだ。
早朝6時、俺たちは再びシティーの街に降り立った。
翌日、バンコク行きを控えて。
メキシコシャーマンハンドメイドの刺繍とレースのクロス
この布は旅仲間のナオキン(仮名)がメキシコに直接行って、
オアハカに住む有名なシャーマン「イネス」のハンドメイド作品を
買い付けてきたものです。※売り切れました。
マリア・サビーナというマサテク族のマジックマッシュルームを使うことで有名なシャーマンがいて、
彼女のセレモニーを受けるためにビートルズやボブ・ディランなどがわざわざオアハカを訪れてきていたらしい。
イネスはマリア・サビーナの弟子というか通訳?的な人で普段は刺繍をしているんですって。
もっとたくさん写真があったのですが紛失。
参考動画
YOUTUBEにイネスのセレモニーの動画をアップしている日本人の方がいました。